失敗がもたらしたカッコ良さ
「あ!失敗したかな?」なんて思ったら結果良かったことって結構ありませんか?僕らは色のサンプル出しなんかをやるのですが、どうかな?って迷いながら不安な気持ちで送り出すサンプルもあったりします。でもそんなのに限って実際に商品で出来上がったら一番お気に入りになったりする。あれはなんだろう。一か八かの際きわを攻めたご褒美かな?
今回、11月にの頭頃にFACTORYの野村さんから連絡がありました。「伊佐さん、すみません。実はコートの加工に失敗しまして、、というか失敗ではないんですが、サンプルと違った感じに上がりまして、、。遅くなった上に申し訳ないんですが、一回見てもらってもいいですか?」という連絡。見て一瞬で僕は気に入って販売しているのがこのコートです。
FACTORY ウールトレンチコート ¥74,800 (税込)カーキベージュ
削ぎ落とせるだけあらゆるパーツをなくしたトレンチコートは、シンプル極まりないコートとなりました。デザインはサンプルで拝見した通りです。違うのは生地の感触。サンプルはもっともっと起毛してポワポワしていました。
実際の仕上がりは起毛感はほとんどなく、まるでクラシカルなフレンチかルゼのようなキリッとした仕上がり。全然違うんですが、僕はこちらの方が良かったんじゃない?と思えるくらい好き。「可愛い」が「かっこいい」になった感じでしょうか?
ここまで仕上がりの風合いに変化が出たのには原因があります。それを聞いてなおさら「いいじゃない」と思いました。実は生地を織り上げる直前に、よりコートとして温かさを増すために、タテ・ヨコともに糸の打ち込み本数を増やしたそうです。その結果、表面がしっかりした為に起毛させるための機械の針が滑って掻けなって起毛させることができなくなった。
だから、まとめると、、サンプル通りにはならなかったけど、温かさが増して、かっこよくなったということです。僕の中では。「ダメ!」というバイヤーさんもいたかもしれません。でも僕はいいと思いました。
袖付けは2枚袖のラグランスリーブです。
袖口は表側にステッチが出てこないように手まつりです。
裾も全部手まつり。そして裏地はなく、一重の仕様です。余計に糸本数を増やしたのは良かったのではないかと思います。
ブラックとカーキベージュの2色展開です。
全部閉めたり、トレンチっぽく少し開けてみたり。
基本的には全部しめるか、全部開けるかの設定で、下の写真のように襟を返して着るように仕上げてはいませんので、一般的なトレンチのような襟の返りははありません。お好みでアイロンで癖をつけると良いと思います。
全部開けて羽織った感じも雰囲気は抜群です。起毛していたときの印象より上質感が増しているようにも感じます。
トレンチやステンカラーにリュックやナップサックっていうスタイル、20代中頃にとっても憧れたスタイルです。好きなお店のかっこいい大人が結構やっていた。25年以上前の話だけど、やっぱり今もかっこいいと思い、たまにスタイリングしてしまう。
ブラックはワンピースに合わせて。
SPのワンピースはちょうど着丈が同じくらいでした。とっても相性良し。
ずっとずっと歳を重ねても着ていきそうなコートだけに、色は迷いますね。ちょっと落ち着きのあるカジュアルなカーキベージュか。それとも冠婚葬祭にも適用しそうなブラックか。
とにかく、良い方向へ行って良かったのではないでしょうか。と思える素敵なコートです。