annabelle

偉大な冒険家

「デザイナー」という響きからはどんな印象を想像するでしょう?僕がファッション業界で働く前に想像していたデザイナーは、とてもとても華やかで派手な存在でした。でも実際に働いてみると、編集者をはじめとするメディアやディレクター、プレス、販売などは確かにそういった印象が強いかもしれませんが、デザイナーはむしろストイックでオタク気質。深く追求するタイプが多いから当然なのかもしれません。僕がお会いした中で最もストイックなオタク気質を感じるのはゴーシュのデザイナー、泉さんです。パターンナーという専門職から独立してのデザイナーだから、よりそう感じさせるのかもしれません。十分に素晴らしいお洋服のプロダクトに対し、最も満足していないのがデザイナーご自身のようにも感じます。試着では魅力になかなか気がつけないシンプルな見た目とは裏腹に、長く着用した際に深く同意できる素朴な衣服としての魅力を持ったお洋服をラインナップするブランドです。

ゴーシュ ワークコート ¥79,200(税込)

撮影で様々なコートを着ている妻が、先日の寒い日の撮影で「あれ?」と感じたコートの一つがこれでした。正直、見た目も触った感じも「温かいコート像」とはかけ離れた印象です。しかししかし、あれ?と思う温かさを感じたみたい。ウールのコートにしては細番手で高密度に織った生地であることが大きな要因かもしれませんが、デザイナー曰く、キャメルが10%混入していることもその理由だと。そしてお値段が上がる要因もそれ。結果、裏なしで軽くて温かいコートが誕生しています。表地の価格を下げて、裏地付きにするという思考もあると思いますし、きっとそのほうが販売はしやすいのかもしれません。でもそうしないところがゴーシュの魅力の一つだとも考えられます。

シャツのような襟は、立てることで防寒に一役買ってくれる。

ゴーシュのシンボルとも言えるパッチポケット。今回は上品な素材のシンプルなコートを彩るワークジャケットに付いていそうなポケットがさりげなく、程よい大人カジュアルな印象をもたらしてくれる。

僕はゴーシュのポケットのデザインが好き。色々なポケットを作るわけですが、洋服とポケットの相性や組み合わせを楽しめる。ワークポケットのような胸ポケットとは対照的な両玉縁のポケットの組み合わせがゴーシュらしい。

袖付けはパッと見では感じられない重要なデザインの一つですが、ゴーシュの大きな特徴的デザインでもあります。「バンザイパターン」と自ら命名する通り、バンザイしても身頃が暴れない運動量を意識したデザインです。

先ほども申し上げた通り、一重のコートです。

背面は長めのベント。

タブも何も付かないスッキリとした袖口です。

なんでこんなに薄いのに温かいのか、、ずっと疑問がっていた妻がモデルです。

ジーンズにセーターというシンプルなスタイリングに。

下には結構な厚手のセーターが着ていただけるコートです。

温かいことで有名なモヘアのストールをしてみれば、真冬でも大丈夫。重ね着を楽しみつつ、秋から冬、真冬まで長く活用してほしいコートです。

僕はゴーシュのお洋服の後身頃と袖付けのバランスがとても好きです。妙に分量を取って細く見せることはしないのに、妙に女性らしさを感じさせる。

ウールのワンピースに羽織る感覚で。

分量感はあるのに妙に女性らしいドロップショルダー。

襟を立てて。街でこの機能を使っている人をあまり見かけませんが、僕は襟を立てて防寒することがよくあります。これをした後でストールを巻くと、温かさが増し増しです。ぜひお試しください。

少し引きで見た時の見た目が好き。機能をフル活用したいという気持ちの部分で見ても好き。

偉大な冒険家は、一か八かの勝負には絶対に乗らず、むしろ石橋を叩くが如く慎重に安全を確認しながら前に進み、それが保証されないと判断すると撤退も余儀なしだというのは有名な話。これはつまり超長期的な計画で今を見ているのかな?とも思えますし、大きな冒険を成し遂げるには、状況や自分自身の分析、決して今の自分を過大評価しない冷静さを持つことが重要だとも取れるお話です。つまり「冒険家」という響きから想像する人柄とは真逆の人物像が冒険家に当てはまる。ゴーシュというブランドは、大きくなることを目的とせず、今自分たちができる最大の努力を重ねることでファンを着実に増やしています。その堅実なもの作りへの姿勢は、まさに偉大な冒険家とイメージが重なるデザイナーです。

 

 

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