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玉井少年

今シーズンの「ASEEDONCLOUD(アシードンクラウド)」は、アナベルにとっては特別のシーズンとなりました。それは昨年の10月に開催した初めての展示販売とワークショップのおかげです。納品されてくる商品の中には、10月にバイヤーとほぼ同じタイミングでオーダーしていただいたお客様の商品も含まれており、ASEEDONCLOUDを通して再びお客様とコミュニケーションが生まれます。デザイナーから直接、テーマやモノづくりについてのお話を聞く機会があったお客様も多く、今まで以上に興味の深まるシーズンでした。今日ご紹介するワンピースが、今シーズン最後のASEEDONCLOUDになると思います。

ASEEDONCLOUD Jiyusou-Dress ¥39,600(税込)

今回、デザイナー玉井さんの物語は「Jiyusou(時遊奏)」という題名のお話。大好きなおばあさんを先に亡くしてしょんぼりとしたおじいさんと、おじいさんを元気付けようと自然遊びに連れ出す別の町から来た少年の物語です。

このドレスの素材はオーガンジーコットンという素材で、無加工のコットンであるため新しい状態では非常に張り感があり、着用した際には滲むように透けるような素材です。今回のこのドレスは、そのオーガンジーが贅沢にも二重になっており、透けるけど見えないような状態がうまく表現できているように感じます。まさに、おばあさんを亡くしたおじいさんが、少年と自然遊びをしながら、悲しい現実を受けとめて、少しずつおばあさんの思い出が滲んでいくイメージで、この素材を選んだということでした。

背面のスモック刺繍の延長のようなギャザー。

こちらが背面の刺繍です。背面を積極的に見せて歩きたい素敵な刺繍です。

ウェストに巻く共布のベルトにも刺繍が施されます。

裾部分にはこのような梯子レースがあって女性らしい可愛らしさを感じます。

二重になったオーガンジーコットンは絶妙な配色に。

もう一色のブラックも同じく配色に。裏地のブラウンがなんとも素敵な配色です。

刺繍の色合いはこの通り。

ブラックも、裏面がブラウンであることで、光が当たると焦茶のようなブラックに見えるのです。

ASEEDONCLOUD Jiyusou Dress Linen ¥44,000(税込)

先ほどのオーガンジーは、物語の中でのおじいさんの感情表現として選ばれた素材であるのに対し、デザイナーの玉井さんは展示会でもバイヤーに公言していましたが、こちらの特殊なインディゴ染のリネン素材は、どうしても個人的に作りたかった素材で、物語とは無関係だそうです。正直でいいですね。この素材は、インディゴ染の後に墨のコーティングが成された特殊な素材なのですが、実はこの手法の素材は今までも作っていました。きっと玉井さんが個人的に猛烈に愛している素材なのだと思います。どことなく玉井さんと物語の少年が重なるのは僕だけでしょうか。

こちらも染色による滲みはある素材となております。コーティングもある分、幾重にも重なった絶妙な色落ちも楽しみな逸品です。

まず背面から見せたいギャザードレス。デザインは今までも数回登場した人気の形です。

このスタイリングでは下に細身の白いパンツを履いていますが、光が当たって初めて滲むように見える感じです。透け感はありますが、それを生かして女性らしく素敵に着ていただきたいワンピースです。

ウェストはベルトを締めて着るわけですが、実は着る人の身長に合わせて、ベルトを通すループが2段になったドレスなのです。

こんなふうに。155cmの妻は上の段に通して着用してこのくらいの着丈に落ち着いていますが、一段下げることで背の高い方も似たようなイメージで着ることができるわんっピースです。

クリーム色のワンピースにオレンジの奥行きのある色合いのカーディガンがマッチします。

こちらがオーガンジのブラックです。

こちらも下には白いパンツを穿いていますが、ほとんど透けていないのがわかると思います。ちなみにこのブラックが、妻が初めて購入することになったASEEDONCLOUDのお洋服でした。僕は実は最もよく着ているブランドがASEEDONCLOUDなのですが、妻はサイズ感と好みが一致するのもがなかったようでした。

さりげなく美しい梯子レース。これがなかったらと思うと寂しいですよね。

長めの羽織でスタイリング。

こちらはインディゴリネン。一見、ブラックと似た感じに見えますが、近くで見るとしっかりインディゴです。墨のコーティングがある分、墨くろブルーのような絶妙なインディゴ。

こちらの方がやや重さもあるためか、ドレープ感がより美しく、着丈も少し長く感じます。

玉井さんとは1年に2〜3回、展示会のタイミングでお会いする程度ですが、いつお会いしても少年のような純粋な目が印象的で、妻曰く「いわゆるアパレルの人とは全然違った空気を持った人」。アパレル業界に居たことのない妻ならではな視点で玉井さんを観察していました。洋服のデザイナーという立場から、自身のお子さんを通して教育にも興味を抱き、実際に活動の幅を広げている姿は、まさに「くもにのったたね=A SEED ON CLOUD」を体現しているかのように感じます。様々な場所や異業種空間へ訪れて、新しい花を咲かせることが出来たなら、それが玉井さん率いるASEEDONCLOUDの本望なのでしょう。今回の物語に登場する少年は、おじいさんとおばあさんの住む街とは違うところからやってきて、引き寄せ合うようにその街に影響を及ぼしていくお話でした。今回の物語ができる何年か前に、玉井さんは実際に木工作家として活躍するおじいさんと出会っています。その木工職人のおじいさんが今回の物語の始まりだとすると、やっぱりこの少年は玉井少年なのかもしれません。僕はそう思い込むことにします。

 

 

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