引っかかる何かが大切です。
僕はものすごく人見知りなので、今自分が小売業を続けていることに驚きなのですが、これしか出来なかったから必死にやっているだけということでもあると思います。人見知りな人は共感してくれると思いますが、出会ってから仲良くなるのに数年かかるのなんてザラで、その間自分の中で何か面白い感じで引っ掛かっているから一緒に居続けたりするのです。お店をやって、新しいブランドとお付き合いを始める時も、それに近い感覚があります。今日はannabelleのブランドの中でも、少し変わった感覚で、しかし最も強く引っ掛かってきたブランドの定番パンツのご紹介です。
SP(エシュペー) チノワイドトラウザー ¥29,700(税込)
もう何回もご紹介しているパンツですから、商品については過去のブログも合わせてご覧いただければと思います。エシュペーのデザイナーは僕よりも一回りくらい若い男性で、初めて会った時からわかりやすく「全力」な人でした。正直、、初めて訪れた展示会で、デザイナーが彼でなかったら今はないと思います。商品の好みで言うと、当時アナベルでバイイングが出来そうなものは一つもなくて、でもすごくバカ丁寧に説明してくれる彼の素材やデザインに対する姿勢や知識や語り口調は、ずっと聴いていられると思うくらい好印象で、心地良いものでした。
僕が初めて訪れた展示会では、まだブランド名が「STASTNY SU(スチャストニー・スー)」という全く覚えられそうにない名前でした。今のクラシックな路線とは少し違った(刺繍や透け感のある化繊を多用していた)世界観を持っていました。ただ節々に、この人はもっと自分が好きな感覚の服や世界があるんじゃないか?と思わせる要素も垣間見せていたのです。
例えば、ルックのスタイリング撮影をした際の靴が、「ここでコンバースオールスターを使うのか?」「しかもハイカット?」とか。あんまりスタイリストっぽくないなと思って聞いてみると、デザイナー自身がリクエストしてスタイリストに渡して使ってもらったという。そんな話を電話で話していた頃が懐かしい。そんなようなことに引っ掛かり続け、3回の展示会で発注をしないまま1年半が過ぎ、4回目の展示会でようやく初めてオーダーを出しました。
このパンツの裾は一般的なチノパンと異なり、叩きではなくまつっています。当時オーダーを出していなかった商品にも、こういう小さなこだわりの累積のようなものを感じていたのです。「この人の作る洋服をもう少し見てみよう」を1年半続けてオーダーした。そして今のSP(エシュペー)とブランドの改名があった頃には、自分好みの商品が増えてきて、今に至ります。このチノパンは、ちょうどその頃に登場して、以来ずっとオーダーし続けている、とてもおすすめのパンツです。
股上はすごく深く、もっとラフでルーズに見えてもおかしくないようなサイズなのですが、穿いてみるととても大人っぽい。ゴムとヒモなのにイージーパンツ感がなく、タックインして綺麗な印象で穿けるチノパンです。
もちろん、革靴やジャケットもとても似合いますし、オールスターのハイカットにTシャツでもかっこいい。
そこはチノパンらしく幅広いコーディネートを楽しんでほしい。
横から見た時の程よい膨らみもめちゃくちゃ好みです。
つい好みでベージュにはブラックを合わせたくなるのですが、過去にはカラーものもたくさん合わせています。様々な色に合わせやすいライトベージュですので、これからの季節には積極的に明るい色や柄物を合わせても良いのではないでしょうか。
SPは、人見知りな僕がまさに引っ掛かり続けて少しづつ濃度を上げてきているブランドです。面白いくらいに拘りの強いデザイナーなので、とっつきやすさはないかもしれませんが、所持して着れば着るほど味を出してくるタイプだと思います。ぜひ長い時間をかけて味わって、自分の中で育ててみてください。きっと最高の相棒になってくれるはずです。