各時代のあたりまえ
GASA*のお洋服は、基本的に中世ヨーロッパの女性の着こなしがデザインのベースになっています。ですから、他のブランドではあまり見かけない、「後付けの何か」例えばエプロンとか、つけ襟などが多く見られるのでしょう。日本の着物のような感覚で、インナーに薄手のコットンワンピースのようなものを着て、ロングソックス、ペチコート、コルセット、そしてまたペチコート、、のようにたくさんの重ね着をして、僕ら現代人が絵画の中で見る女性のドレスアップは完成します。GASA*のお洋服は、その様々に登場する重ね着衣服の中から、現代服を見出してるようです。
GASA* “導かれた場所” ギャザーキュロット ¥44,000(税込)
こちらのキュロットも、たくさんの重ね着をしていた時代のペチコートをモチーフにしたキュロットではないでしょうか。非常に素朴でシンプルな紐の仕様にサイドはボタン。そしてこの分量感が素晴らしく美しい。
生地分量もものすごい。高価な生地を贅沢に使用したGASAらしいキュロットです。
フロントには、補強のような配色のステッチがあり、素敵です。
サイドボタンは、一つ失くして付け替えたような設定のデザイン。他のお洋服でもボタンを失くした時、メーカーからボタンを取り寄せるのもありですが、何か違うものを付けるのも楽しいですよ。段々、長く着れば着るほど自分らしいものになっていく。
今回、色は2色展開でのご紹介です。久しぶりのブルーにテンションが上がりましたが、キナリはキナリでステッチ配色が可愛かったりして目を引きます。
中世の女性がドレスを着る最中のようなスタイリング。白赤黒のはっきりとしたカラーリングで。
この着丈も久しぶりな着丈。最近はマキシやロングに慣れているので、とても短く感じました。
完売したキルティングコートを重ねて。このスタイリングバランス、確か6〜7年前は「奇抜」って思われていました。ロングスカートにロングコートはダメだったのです。スカートの裾がコートから見えているのが嫌だという方も多かった。全般的に「ロング」に対する違和感を覚えていたのだと思います。
たったの3年くらいで「奇抜」が「普通」になるのがファッションの一つの醍醐味です。だから我々洋服屋はいつも自身の中での「奇抜」を探してしまう。職業病みたいなものでしょうか。
ブルーは同系色でタックイン。
ポケットはボタンの反対側にあたる、右だけに付いています。そういえば中世はまだポケットが後付けのエプロンのようなものでしたね。ポケットが洋服と一体になったのは近代です。
GASA*のカタログでモデル着用をみるととても短いので、本当はもう少し短いのを想像してデザインしたのかな?って考えますが、今の感覚で見ると、これでも短く感じますよね。この後みんなの気分はどこへ向かうのだろう?楽しみですね。
僕はこの組み合わせがお気に入りです。素材の合わせがお気に入り。クラシカルなGASA*の洋服にナイロンやポリエステルの光沢感や張感を乗せていく感じ。
ボリュームのあるボトムスにロングシャツ丈。これもいつの間にか多くの方に許容されました。しかしここからのショート丈やジャケット丈、もしくはベストの重ね着となるとまだまだ普及されていないように感じます。特に大人には。
各時代の「あたりまえ」の変化って面白いですよね。今は情報の量とスピードが凄まじいので変化も昔と比べると早いのは当たり前。だから「一周回って」なんて言葉もよく聞かれる。すぐに一周回っちゃう。何周もしていると目が回ってどこへ向かうのか自分でもわからなくなる。だから皆さんも古いものに目を向けるといいのだと思います。コレクションで発表されたトレンドが本家より先にファストファッションから登場してしまう今の時代、トレンドにはさほど意味を感じません。もちろんトップデザイナーの放つ感性は素晴らしいし、好きなブランドのランウェイは楽しみ。でも一洋服好きとしては、古いものへの興味をお勧めします。そこから自分らしい新しさを発見する楽しみはとても面白いし、洋服を見る目がまた少し変わってきます。GASA*の素晴らしいコレクションを見ていると、いつも安定した「らしさ」にそんなことを思います。