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羽織という幻想

ようやくアウターを取り出した方も多いのではないでしょうか。今日は心地よい秋晴れの月末でハロウィン。いい加減シャツ一枚では寒いな、、と素直に感じられる気候となりました。この季節に皆さんがよく口にするのは「羽織」ですが、もうお店を始めて12年半が経って、未だにこの「羽織」の正体がわかりません。ニットカーディガンが人気だった5〜6年前は、「羽織=ニットのカーディガン」という答えらしきものがありましたが、それ以外に明快な答えを見たことがありません。だからこの「羽織」という言葉そのものが実は幻想なんだと最近は思うようになりました。羽織とは昔からあるカーディガンかもしれないし、ブルゾンかもしれないしジャケットかもしれない。同じものを指してある人は「羽織」というかもしれないしある人は「ジャケット」というかもしれない。きっとそんなポジションにいるのが「羽織」なんだと思うのです。去年、今年と2年連続でアナベルで力を入れたのは、「ジャケット・ブルゾン」と「ベスト」です。これがいったい羽織なのかそうでないのか、それは着る人が決めてくれたら良いのだと思います。今日はそんなブルゾンをコーディネートしたスタイリングをパンツと共に紹介いたします。

HandWerker(ハンドベイカー) コーデュロイブルゾン ¥37,400(税込)

実は以前にも素材違いでご紹介したことのある僕のお気に入りのブルゾンで、自身でも皮脂汚れが気になってくるほど相当にたくさん着ているブルゾンであります。以前紹介した時の素材は、少し硬いハンプとデニムでしたが、今回はより女性のお客様に取り入れてほしい、ソフトでいて程よい厚みもあるコーデュロイ素材でのご提案です。

大きな面積を取る大きなポケットが特徴的なノーカラーのブルゾンです。決してタイトとは言えないゆとりのある身頃に対して、とてもすっきりとした袖が特徴的で、それが故にこの上からオーバーコートを着ることができるのが嬉しいところです。

ポケットは相変わらずユニークで、デザイナー玉井さんのこだわりの一つと言っても過言ではないでしょう。ASEEDONCLOUDの商品も含めて、ポケットに特徴を持たせたお洋服がたくさん見られますから。今回は大きなマチ付きのポケットの中にペンや小さな工具を指しておける細いポケットがコンパクトに並んで、その上だけにフラップが付いています。アンバランスなようで絶妙なバランスを見せる素敵なデザインです。

また裾にも特徴を持たせています。オッドベスト(テイラーJKの下に着るタイプ)を連想させるカッティングで、前後差をつけているところもそれらしいデザインです。

背面の着丈のほうが短くなっています。これもオッドベストによく見られる特徴です。また背面にタックを取ることで、とてもすっきりとした収まりを感じます。

実はモデルをしてくれている妻は、若い頃からこの手のデザインのお洋服に痛烈な苦手意識を持っています。いまだかつて着ているのを見たことがありません。今回、撮影の前日に妻にお願いをしてみました。「このブルゾンを自分でもかわいいと納得のできるスタイリングを考えてほしい」と。ということで、今回ご紹介するコーディネートは、ほとんどが妻によるものであることを先にお伝えいたします。

まずコーデュロイブルゾンのオフホワイトはお気に入りのサカナヤパンツに合わせています。このブルゾンを素直にカッコよくスタイリングした、いわばド直球とも言えるコーディネートです。正直このスタイリングを見せられた時、「なんで今までそういう服着なかったの?」と疑問がよぎるほどでした。

このオッドベストのようなカッティングを僕はかなり気に入っています。これでなかったら買っていないと思います。そのくらい、これであることでさまざまなお洋服にバランスよく着ていただけるように感じています。昔素材違いでご紹介した際には、ワンピースにも合わせておりました。そのくらい守備範囲の広いバランスです。

前を開けて、まさに「羽織」のような感覚で着てほしいブルゾンでもあるのです。

もう一色はブリックというお色です。少し前に同素材のパンツをご紹介していますが、とても素敵な色なのです。

ブリックはNO CONTROL AIRが出してきた、あらたな注目パンツ、その名も「モモ山パンツ」に合わせています。ちなみにこのパンツの愛嬌のあるネーミングと素敵すぎるシルエットに感激した妻は、「パンツ」に「お」をつけた方が良いのではないか?と言い始め、「モモ山おパンツ」と再命名しておりました。

そして実はこの妻が出してきたコーディネートには、今まで妻が苦手としていたアイテムがてんこ盛りであることにも注目してみていきたいと思います。ブルゾンそのものが苦手であることは先ほどもお伝えしましたが、実は下に着ているような襟付きのシャツも苦手で、妻の洋服整理担当の僕の目に間違いがなければ、襟付きのシャツは一枚も見たことがありません。今回はじめて欲しいと言った、奇跡的な出会いを見せたのがこの下に着たシャツでした。

こちらです。狙っていたこのブラウンのXSが完売して、他の色を検討している最中です。そして合わせているVチップのレザーシューズ。これも苦手なアイテムです。ようするにメンズライクな匂いがするアイテムを避けてきたのが今までの妻でした。それを知っているだけに、「どんなスタイリングをするのか?」楽しみにしていたのですが、想像以上の出来栄えに少し驚きも隠せません。

横から見るとブルゾンの裾のカッティングがよくわかりますし、モモ山おパンツとの相乗効果も存分に発揮されたスタイリングです。ワンピースやワイドパンツだけでなく、スカートにも合わせやすいバランスです。

このすっきりした後ろ姿も大好きです。

こちらもボタンをはずして今時期に着ていたら、人によってはこれを「羽織」と呼ぶのだと思います。

羽織と考えた時に、上からコートを着ることはまったく不思議なことではなく、むしろ自然なことだとも思います。僕にとってはこの上なく基本的な組み合わせのスタイリングですが、きっとジャケットを中間衣服として用いることの少ない女性には縁遠い重ね着なのだろうと感じています。若い世代に注目される90年代には、大人の女性の間でもよく見られたスタイルですから、見直してもいいのでは?とそう感じてのしつこいくらいの提案です。

次に「モモ山おパンツ」に注目したいと思います。
NO CONTROL AIR モモ山おパンツ ¥32,450(税込) オフホワイト

その名の通り、もものあたりが極端に膨らむようにデザインされたパンツです。絶妙な位置に山を作ることで、脚長効果が明らかに感じされるパンツです。タックによる表現であるため、一定のハリ感のある素材の方がよく特徴を表してくれるため、今回のこの素材はとてもデザインにマッチしています。

ポケットの下あたりで極端につまんでいます。

少し色が飛んでしまっておりますが、FACTORYのセーターに合わせてシンプルなスタイリング。

ちなみにこちらは僕のコーディネートです。少し総丈の長いパンツでしたので、ヒールでも合わせてみたかった。

今年もFACTORYのセーターが少しづつ入荷をしていますが、今回は新しいデザインや素材に厳選してセレクトしています。こちらもその一つで、素材に厚みを持たせたキャメル素材で、「ウォーミーセーター」という名前が付けられています。非常によく考えられた素敵な素材です。

上からは、相当に温かいと評判のNativeVillageのショールカラーコートを着てみました。先ほどのブルゾンスタイルとは一転して、いかにも女性らしいスタイリングです。この両極を自身のコーディネートパターンの中に持つことで、それぞれに相乗効果が生まれてワードローブのそれぞれのアイテムに、きっと奥行きが出てきます。

ダークグレーはklauseのシャツをタックイン。シューズもいつものDELMONACOのローパンプスでワンクッションさせて穿いています。155cmですと擦らない程度にワンクッションする感じです。ここで少し長々とサイズの説明を書いてみようと思います。ぜひ参考にしてください。

今回はサイズ3だけの展開で、160cm前後の方はおおよそこれらの写真のような印象で穿いていただけると思います。ちなみにユニセックス展開の3、4、5、の3サイズ展開で、5というサイズは身長185cm程度の男性がワンクッションで穿いていただけるようなサイズです。サイズ4は実はわたくしが個人オーダーをしておりまして、170cmでハイウェスト気味に穿いて、ちょうどワンクッションする感じです。イメージとしては175cm前後までカバーするようなサイズだと感じています。しかしわたくしが残念なほど短足であることを考慮すると、だいたいではありますが、女性だと165cmくらいの方から、ウェスト位置にもよりますがSサイズの方が良いという人が出てくるように思います。今回気に入ったパンツでしたので、サイズ4をバイイングするかどうか悩みましたが、162cmほどのブランドスタッフさんにも着用していただいたところ、サイズ3で十分でしたのでワンサイズ展開とさせていただきました。ウェストはゴムと紐で、多少下げて穿いていただいたりといった調整はできますので、その辺りも考慮してご覧いただけたらと思います。逆に小柄な方は丈上げが必須となるパンツです。

サカナヤパンツに続くナイスネーミング、「もも山パンツ」。ネーミングをしないデザイナーも多くいらっしゃいますが、僕はひそかにそこも楽しんでいる一人です。なんだかデザイン以上にデザイナーのセンスを垣間見せるところがあるのです。「もも山パンツ」に「お」を付けたいと言った妻は、きっとデザイナー米長さんにシンパシーを抱いているはずです。とてもユーモアのある関西人のデザイナーですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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