セピア色の記憶
幼少期の写真などめったに見返すことなどないのだが、
不思議とはっきり覚えている写真は数枚ある。
もちろん、その時をリアルタイムには全く覚えていないのだが。
「昭和」という時代は、想像を絶するような激動の時代であり、
最も興味を惹かれる歴史が詰まった時代である。
貧しさから見える小さな幸せや光。
なんでも気合で挑む根性論。
ビートルズやツイッギーで始まる日本におけるファッションの歴史。
現在では、「昭和レトロ」という言葉でくくられる、家具やファッション。
昭和の生活には、不便だが本質的な見習うべき何かが見え隠れする。
当時、一度は否定されてなくなったものを、後世の人が拾い上げる。
共感できる部分を上手に拾い上げる。
gasa grue 開襟ワンピース
cherry red ¥30,000+tax
ややハイウェストで、礼儀正しい襟元は、
どことなく懐かしい。
少し大きめに開いた胸元と、
小さく女性らしい縦長の個性的なポケット。
ネックレスを忘れてはいけない。
丁寧に仕立てられた額縁。
トラディショナルを重んじる、やや男性的な
モノづくりへの心理が垣間見える。
インドマドラスをオーバーダイすることで、
何とも絶妙な、甘さ控えめな素敵なピンクが誕生した。
長すぎず短すぎないこの丈は、
ラフなサンダルを合わせるよりも、
ソックスに革靴がとてもよく似合う。
ウェストに見える、アットランダムなようで
計算されているようにも見える小さなギャザーは、
軽快でリズミカルなミシンの音を想像させる。
記憶の扉の奥にある、小さな引き出しに大切にしまわれた、
セピア色の写真に映る母のワンピースを、
思い起こしながら今の自分の感性と重ね合わせる。
そうしてまた、新しい時代が築かれてゆく。