quitan(綺譚)
quitan(キタン)
“私達の世界は、豊かな”違い”で溢れていました。
世界中に散りばめられたそれらは、決して不調和などでなく、それぞれの地に根を張り、共存していたことでしょう。 ほんの100年前の世界、文明の発展とともに多様性が失われる前の世界とは、一体どの様なものであったのだろう。点と点とを線で結び、紐解いてみたいのです。
quitanは”文化の交歓”をテーマに様々な民族の文化や衣装から着想を得て、それらを点と点を繋ぐようにデザインに落とし込み新たな解釈でモノづくりを行っています。ブランド名の”quitan”とは、美しい文章で書かれたふしぎな物語という意味の「綺譚(きたん)」という言葉からつけられました。
僕はこのブランドコンセプトが大好きで、何度も読み返してしまいます。どこか現在の秩序に対して否定的な哲学を感じさせながら、でも「自分達はこうありたい」と締めくくっています。ファッションデザイナーという立場から、さまざまな文化や歴史を見て感じたことを自身のモノづくりに反映しています。今回は、昨年にも登場したダネティ・ジャト族の少女が着た衣装からインスピレーションを得た、quitanの代表作とも言える素敵なブラウスのご紹介です。
quitan サイドギャザーブラウス ¥52,800(税込)ペールローズ
インドのチャンデリシルクが高騰して使用が難しくなったという話は耳にしたことがあります。10年前はコットンシルクの70/30で、シンプルなブラウスなら3万円以内で購入できましたから。今回のコットンシルクは60/40で、シルクの割合の高い手紡ぎ手織りのカディコットンシルクです。光沢感が程よく、真夏にも快適に着ていただける素材です。秋にはボトムスを変えてインナーに長袖を合わせても良いでしょう。
実は昨年も同様のブラウスを販売したのですが、その際にネック周りが小さく諦めたお客様が数名いらっしゃいました。たしかにかなりギリギリな小さいネックだと感じ、展示会でデザイナーさんにそのお話をしたところ、今年はネックを印象が変わらないように少し大きくしてくれています。
ダネティ・ジャト族というのは僕は聞いたことがないのですが、砂漠をラクダに乗って暮らす民族だそうです。ラクダにまたがることが多いため、幅の広い服装を好むようです。今回はその民族の上着をモチーフに、quitan的な発想でデザインされたブラウスです。
デザイン的に脇が開口したブラウスは、素材もあってとても涼しい夏アイテム。
ギャザー部分を広げるとこんなことになっています。何か他にも着方があるような気配?も感じますね。
両脇の帯のような布を絞るとこのギャザー分量です。
とても上品な光沢のあるコットンシルクのカディは、インドのもの。
後ろ側はボタンで留めるデザインです。
裾は切りっぱなしでミシンでほつれ止めはしています。
色違いのアイアングレー
ペールローズはNO CONTROL AIRのアラジンパンツを合わせました。ちょっとスポーティーな雰囲気のあるパンツとのギャップが気に入っているスタイリングです。
異文化の国の装いを見てみると面白いですよね。インドの砂漠地帯では、大きな髭のおじさんがこのような洋服やカシュクールギャザーなんかをセットアップで着ています。
デザイナーの宮田さんは160cm以上ある方なので、本来はもう少し背の高い人の方が似合うのかもしれませんが、着てもらうとバランスは良いと思います。こちらの色はテーパーシルエットで合わせていますが、もう一色はワイドストレートシルエットで着てもらいました。
こちらはパンツが少し長かったため、5cmのヒールを合わせました。
ただ、ヒールでなくてもバランスは良かった。155cm前後の方でも素敵に着ていただけるブラウスです。バッグは来月展示販売のあるSAFUJIのもの。
この横姿が大迫力。
ちょっとしたアレンジとして、脇でそれぞれに結いていた紐を後で結くと少しアクセントになってこれもまた素敵です。
ギャザーが脇から後に少し移動する感じに見えます。ある程度ボリュームがあった方がバランスの良い時は脇で結く方がお勧めですが、スッキリ見せたいバランスの時はこれもありかと思います。
quitanのお洋服は、世界の衣服からインスピレーションをもらいながら、デザイナーが新たなかたちを表現しています。イギリスやフランスのワーク服もあれば、今回のような少数民族の衣服もその範疇です。洋服を通じてずっと旅を続けているような感覚なのでしょう。一貫して縫製レベルが高く、独特のこだわった仕様が見られるのも洋服好きにはたまらない点です。手首が見えてアクセサリーが映える袖の長さも絶妙です。洋服を見る目はどこか男性的なオタク気質を感じさせながら、スタイリングはしっかり女子なブランドとデザイナーです。近くで生地を見た時の光沢感と、着用した時の布地の分量に、テンションが上がる1着です。