annabelle

『研究しなくては』

一般論は一般論であり正解ではないということを

彼女の活動を遠くから眺めながら、つくづく感じていたものでした。

6年前の夏ごろ、彼女が初めてお披露目した展示会に赴きました。

その時は様々な理由からお取り扱いには至らなかったのですが、

とにかく気になる存在であり続けていたことは確かで、

一般向けの販売会などにも足を運び、自宅用にいろいろと

買っては使ってみて、感心するのでした。

そしていよいよこの秋冬、お取り扱いが始まりました。

coova(コーバ)
ポシャギ風スクエアショール
¥22,000+tax white、pink

韓国の伝統的なパッチワーク技法を用いた布地を

ポシャギといいますが、こちらは様々な織りを使い分けることで

あたかもパッチワークであるかのような布地に仕立てています。

coova の代表である瀬谷さんは、学生時代からテキスタイルの

研究に没頭し続けてきた、私からしたら相当な布地オタクです。

独立前の勤め先も、八王子で生地を作る会社に所属し、トップメゾンの

デザイナーに向けてテキスタイルの設計だけでなく、デザインから製作、

営業までなんでもこなす忙しい毎日を過ごしていた。

織物であることを生かした端の処理も素敵なデザインです。

ホワイトは切り替え部分でイエローを使っていて、

巻いた時のポイントになっていますよ。

織物は大きく分けて、「手で織る」か「機械で織る」か、

どちらかであるが、彼女は機械で織りながらその中間くらいの

仕上がりを常にイメージしながら設計しているといいいます。

だからなのでしょう。

このぬくもりは。

白シャツにホワイトを重ねて。

125cm角のスクエアであるこちらのストールは、

三角形に折って巻き付けたり、羽織ったりできる。

細番手の糸を用い、WOOLとSILKをおよそ半々で織っていることから、

ほんのりと温かく、真冬はもちろん春先まで活躍するような素材感です。

同じくcoovaさんが一点モノで製作したこちらの

タッセルピン(¥8,000)を使って留めてみると、

華やかさが増してくる。

金工作家さんにピン部分から手作りして作ってもらったという

タッセルピンは、瀬谷さんが集めていたというアンティークの

ビーズとあいまって、とても雰囲気のある一品に仕上がっている。

お洋服の色合いがダークになる秋冬には、

とても嬉しい2色展開です。

オフホワイトにピンク。

ブラックにピンク。

どちらもコントラストの出る組み合わせですが、

とてもよくスタイリングに馴染みます。

四方に施されたフリンジがふさふさとかわいらしく、

つけていただくと想像以上に存在感を感じます。

スクエアショールですから、このように

軽く羽織るように使っていただいても素敵です。

赤いワンピースに重ねたりして。

coovaは、瀬谷さんの前職の社内で、同僚である

仲間数人で起こした社内ブランドが起源になっている。

相当な忙しさの中、やりたいことを実現するために、

当時の社長にお願いして、通常業務が終わった後にも織機を

使わせてもらい、ひっそりと夜な夜な「coova」を形にしていったそうです。

そんなある日、いよいよ形になってきた商品を発表しようかと、

ダメもとで作品展に応募したそうです。

そして見事に審査を通過した矢先、所属する会社が倒産します。

「日本の繊維業界に未来はない」

私が務めていたアパレル業界でもよくささやかれていた言葉です。

中国生産をはじめとする、海外生産の安価な商品が大量に出回るように

なった当時、そう言われても誰も否定できない切羽詰まった状況でした。

会社が倒産すると、当たり前のように、そしてしかたなく、

同僚やcoovaを一緒にやってきた仲間はバラバラになり、

それぞれ別々の道を歩み始めます。

しかし、瀬谷さんはどうにもあきらめることが出来なかったそうです。

周囲の人たちの反対を押し切り、一人で「coova」を続ける決意をします。

6年前、彼女がcoovaを続け始めた当初、縁あって数回お店に

立ち寄ってお話しする機会がありました。

その後もこちらから展示に赴いたりすることが続く中、

会話の中で彼女の独特な言い回しで、ある言葉を何度も耳にします。

それは、「研究しなくては」というつぶやきのような言葉。

瀬谷さんにとって、coovaを通したテキスタイルの製作は、

常に研究対象なのでしょう。

数学的思考と、芸術的感性の両輪があって初めて素晴らしい

テキスタイルは生み出されるのだと思います。

それが出来れば、日本の繊維業界にも未来はあるように感じさせます。

coova の素敵なストールが店頭に並んでおります。

ぜひ、ご覧いただきたいと思います。


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