再び動き出した物語
初めてなのにそんな気がしないこと、たまにありますよね。
annabelleでこの春からお取り扱いを始めた、「ASEEDONCLOUD」
というブランドには、まさにそのような感情を抱いています。
annabelleをオープンした2012年の秋、彼らのコレクションを
はじめて目にしました。初めて見た時から、
ずっと気になる存在ではありました。
当時はお取り扱いには至らなかったのですが、
その時交わした名刺交換からか、それから彼らはずっと、
定期的に展示会のお知らせをくださいました。
必ず、前シーズンの素敵なカタログを添えて送ってくださっていました。
何でしょう。。長い間文通を続けていた相手と、
いよいよ御対面するときのような、そんな感覚です。
少しずつ、「ASEEDONCLOUD」の素敵なお洋服をご紹介していきます。
ASEEDONCLOUD(アシードンクラウド)
spring coat ¥48,000+tax
とてもトラディショナルなものへの愛情を強く感じるモノつくりを
する彼らのコレクションは、決して古典的なものではなく、
トラディショナルな要素をたくさん持ちながら、むしろ新しさを
感じさせるものである。
デザインは、ミリタリーコートをベースにしたハードな印象の
コートであるにも関わらず、パッと目に入る印象はとても柔らかく、
優しさを感じさせるものである。
野良着をイメージした太番手のザクっとしたコットン生地は、
着るほどに馴染み、お洗濯を繰り返すことでしなやかさを得る。
洋服好きにはたまらない、育てる感覚も楽しめる。
フードは基本的に出して販売していますが、このように
収納することもできる。
通常はこのようにフードが出ています。
コットンの見生地に対してやや硬いコットンナイロンの
微配色の絶妙な色合いも素晴らしい。
フードと同素材で裏の補強などがなされています。
ポケットもこのように。
フラップをしまい込むと、別布の縁が浮き上がるようなデザインです。
大きな腰ポケットも袋部分は別布です。
こちらは左側のポケット。
こちらは右側のポケット。
サブポケットが後ろ身にかかって付いたガーデニングウェアの
ような印象を受けます。
袖自体は非常に太く、短く、着た時の印象は
少しポンチョのような印象を抱く可愛らしいデザインです。
袖口はシンプルにスナップで幅も変えられるデザインです。
非常に低い位置に付いたウェストのドローコードは、
簡単に引っ張り、絞ってシルエットに変化をつけることができる。
susuriのフロッグパンツに合わせて。
ウェストの位置が低く、シンプルなデザイン要素にも関わらず、
独特な印象を抱かせるお洋服です。
脇の別布を用いた大きなポケットも特徴的。
フードをしまい込んで、前を開けて羽織のような感覚で。
ポケットがたくさんあるのも頼もしい。
こちらは色違いではなく、素材も違います。
コットンナイロン素材を使用し、インディゴ染めを施しています。
非常に高密度なコットンナイロン素材を製品染めしているため、
味わい深い染ムラがあるのがいい雰囲気を出している。
黒紐が付き、ややハードなメンズライクな印象も
もう一方と異なるところ。
サイドから見た袖付けは、カーブが付き立体的なデザイン。
コットンのキナリと比べて、パリッとした硬さのある
ナイロン混の素材感がレディースには新鮮で、
ユニセックスならではの感覚かもしれません。
GASAのパンツにシンプルにFACTORYの
リネンコットンのセーターを合わせ、羽織ります。
メンズライクな中に春らしい色合いの刺し子のパンツが
女性らしさを感じさせます。
前を閉めた際の衿の返りも抜群にきれいです。
彼らのコレクションには毎回物語の設定が細やかになされており、
そのストーリーを感じながらお洋服を見ていただくと、
より楽しんでいただけることかと思います。
毎回、友人のイラストレーターによる素晴らしい
表紙が時を重ねてゆく。
今回の物語は、双子の姉妹が蒔いた種から育った花たちが
地上のみんなに愛されてゆくお話。
カタログの冒頭はこんな文章で始まっている。
双子たちの花は有名になりました
その影響で彼らが雲と地上の行き来に使用していたハシゴを使い
たくさんの人々が勝手によじ登り 花畑を見に来ていました
最上花を見た人々は花の美しさとみず色が綺麗な朝日 オレンジが綺麗な夕日
その時々の天候によって世界の色が変わる様が本当に美しくて
ハシゴを ”天国へのハシゴ” と呼びました
評判が評判を呼び 更に多くの人々がなだれ込みました
あまりにも多くの人が来ることで花たちは驚き
人が来ない夜にだけ花を咲かせるようになりました
彼らもそんな花たちを不憫に思いハシゴを外してしまいました。
その代わりに花たちが綺麗に咲き終わった後 花の種を地上に向け蒔きました。
そしてまた 種たちの冒険が始まるのです
『ASEEDONCLOUD 2020SSカタログより』
実は今回のこのテーマは、ある重要な物語の続きなのです。
その物語とは、デザイナー玉井健太郎がゆり組の時代に綴った素敵な物語。
題名は「くもにのったたね」。
英語で綴ると、、「a seed on cloud」
彼らのブランド名は、この物語になぞらえて、
「ASEEDONCLOUD(アシードンクラウド)」となりました。
何十年もの時を経て、少年、玉井健太郎が綴った物語が
大人になった自身の手で再び動き出しました。
続きが見たくなって当然です。
わたくしもその一人。
観客として見届けてゆきたいと思います。