彼らなりのスタンダード
人は見たことがないものや、味わったことがないことに
衝撃を受けたり、影響されたり、感動したりします。
今から10年か11年くらい前に、あるお店でNO CONTROL AIRという
ブランドを初めて見た時、当時洋服に関して少し膠着状態であった僕に、
新しい気分をもたらしてくれた。お店の人にお勧めされて、
鏡の前で合わせてみたのだが、当時の僕にはどう着たらいいか
まったく想像がつかず、買わずに帰ってきた。しかしブランドに
対する興味は、反比例するかの如く湧いてきたのを覚えている。
その時すでに独立を考え始めていた頃で、もちろんNO CONTROL AIRも
お取り扱いしたい候補に入っていた。が、実際にお取り扱いを始めたのは、
その4年後でした。興味は津々でしたが、販売する自信がなかったのです。
だって、自身が買わずに帰ってしまったんですから。
あれから時間が経ち、お取り扱いをして6年目になりましたが、
今でも「新しい」を見せてもらえるという期待が大きくなってしまいます。
とりわけ、彼らが数年前にスタートした「FIRMUM(フィルマム)」という
新しいブランドは、全デザインが男女兼用で、それがまた無理なく新しく
収まっているように感じるのです。
FIRMUM
linen×silk kimono coat
glencheck ¥36,800+tax
こちらのデザインも男女兼用でXS~Mまで存在しますが、
annabelleではXSのみのお取り扱いです。
すごい肩傾斜にちょんと突き出た袖がかわいらしい。
デザイナーの米永さんは、きっと「もしもシリーズ」的な発想が
得意なデザイナーさんなのではないかと思っています。
結果、デザイン対象の概念を覆すことになる。
僕が10年ほど前に、買わずに帰った商品も男女兼用のシャツでした。
それも当時には珍しかった大きくてバランスの変わったシャツでした。
「もしもシャツがデカかったら」という発想で作り始めたのかもしれません。
そのままデカくしたら、「袖が長いからそれは短くしようか。」みたいな。
どうしても着丈が長く感じてしまって買わなかったのですが、
彼らは今も似たようなバランスでデザインし続けています。
きっとそれが彼らのスタンダードなバランスなのでしょう。
デカいシャツを作ったら、シャツという概念から外れて、
何と呼べばよいかわからない「新しい」ものが生まれていた。
それをいろいろなアイテムで彼ららしい独特なバランス感覚で
作り上げています。
今回は、着物でしょうか?浴衣でしょうか?
そんな想像をしながら着てみてほしい。
フロントは表からは何も見えないようになっていますが、
内掛けにボタンが一つ。外側にも一つ。
ボタンをループに引っ掛けるデザインです。
脇には大き目なスリットが入ります。
このドレープ感、もう理屈でなくかっこいい。
パンツはNO CONTROL AIRの裾ゴムパンツ。
内側にはHonneteのギャザーワンピースを。
袖はやや長いものの、嫌な長さではありません。
布地がボタンなどでしっかり留まっていないところがいいのでしょう。
適度に素材のたわみが出て、美しいドレープ感を生み出しています。
生地はリネン75%、シルクが25%。
3色以上の色糸が交差する、絶妙なグレー。
遠目に見ると忘れてしまいそうですが、グレンチェックです。
そして、袖をまくって前を開けて、羽織として。
ボタンを留めるとコートのように、開けると長いカーディガン
のように素敵に着ていただける薄い羽織コートです。
二十歳くらいの頃、本格的にいろいろな洋服に興味を
持ち始め、柔道着をかっこよく着れないか?
ペイズリー柄のパジャマズボンをかっこよく履けないか?
あらゆるものを着てみようと実践していた。
今思うと90%は恥ずかしいのだが、当時は楽しくて仕方なかった。
NO CONTROL AIRやFIRMUMの洋服を見ていると、
いつもそんな昔のことを思い起こす。
彼らの作る服は、いい意味で「ちょっとふざけてみようかな?」って、
ファッションに対してポジティブになれる洋服です。
なんとなく今の自分のファッションの殻を破りたいな、、って
考えている人に、まっさきにご紹介したいと思うブランドです。
気分も新たになれますよ。
<お知らせ>
6月より、実店舗の営業日数を少し増やしております。
営業日程につきましては、通信販売ページのカレンダーをご覧ください。
今週は、6月3日(水)がお休みです。