annabelle

やっぱり目が離せない

quitan(キタン)の展示会に初めて伺ったとき、ひとしきり見終わったあたりで感じたのは、女性デザイナーの作る洋服としてはあんまり見ない「USED感」や「やれ感」そして「オタク気質」だったことを覚えています。そしてデザイナーの宮田さんに、「伊佐さんは覚えてないかもしれませんけど、わたし伊佐さんを展示会で接客したことがあるんです」と言われて尚びっくり。デザイナーとして駆け出しの時代に、(僕もショップオーナーとして駆け出しでした)あるワークブランドで働いていた際に僕を接客してくださったことがあるとのこと。その話を聞いてすごく腑に落ちました。古着を分解しちゃうタイプの人でした。しかしそこに女性らしい柔らかな感覚も加わることで、なんとも不思議なニュアンスを携える洋服が「quitan(キタン)」です。今日はquitanの代表的なコートデザインの中綿バージョンをご紹介します。

(通信販売はこちら)

quitan 中綿コート ¥97,900(税込) ティーベージュ

デザイナーお気に入りの定番的存在のコートで、アナベルでは初めてお取り扱いをしてみました。1950年台のフランス陸軍のレインウェアをモチーフに現代的にアレンジを加えたコートで、ユニセックス展開のサイズ2をセレクトしています。一番小さなレディース対応サイズは1ですが、着用した際の好みが妻と一致したため、このワンサイズでのセレクトといたしました。

チンガード付きの小丸のステンカラー

しっかり首に沿って、防寒になる襟のデザインです。チンガードを襟裏のボタンに留めることで、襟裏に収納して見えないようにすることも可能です。

フックも省略しないあたりがデザイナーの宮田さんらしさを感じさせます。

フロントは比翼仕立てで、ぽってりとした陶器のような雰囲気のミルク色のボタンも素敵です。

ヨーロッパ古着によく見られる身頃と袖一体型の前身頃が特徴的です。

そしてとっても宮田さんらしいのがこのポケット。箱ポケットと貫通ポケットが並んだデザインです。ヴィンテージに見られる機能的な面白いデザインは、現代的に簡略化され、コストパフォーマンスとして美化されがちですが、このポケットを採用して(おそらく譲れない決意で)ニンマリしているデザイナーは大切にされるべき存在でしょう。ちなみに貫通ポケットはベルテッドなどでガッチリ着込んだコートの下の洋服のポケットなどからも物が取り出せるように作られたポケットで、現在ではトラディショナルな洋服の仕様を好むデザイナーによく用いられる印象です。

様々な生地で登場するこちらのコートですが、今回は総裏の中綿コートです。綿は多過ぎず膨らみ過ぎず、ちょうどいい質感で、気に入りました。

もう一つ、quitanのお洋服を何シーズンか見てきて気になっているのは、他のブランドより「見返し」を使うことが多いところ。。パンツの裾やコートの裾、そしてこの袖口も見返しの仕様です。「見返し好き」なのかな?こういうところも好みですからね。

そしてこのコートの1番の特徴は前後にあるこの意味不明なボタンです。初めて見た時、別パーツで何かケープ的な物が付くのかな?なんて思って見ていたら、どうもそうでもないみたい。。「このボタンなんですか?」と聞いてみると、昔古着屋で見つけたコートに同じように意味不明なボタンが付いていて、どうやらそれを着ていた当時の人がケープ的な雨蓋を取り付けて着ていて、雨蓋だけ時の流れの中で紛失して、コート本体に意味不明なボタンだけが残った状態で現代の古着屋で売られているのを見て、余計にそのコートに惹かれたそうで、このコートにはその意味不明なボタンをデザインとして残したかったとのこと。

最高ですね。

もう一色はこんな黄緑のようなイエローです。

ブランドからはネイビーも出ていますが、アナベルではこの2色展開です。

GASA*の袴のようなストライプのパンツに合わせて、差し色にモヘアのストールを。

本来155cmの妻はサイズ1がちょうどではあるのですが、サイズ2のほうがどうしても可愛く見えてしまったため、アナベルではサイズ2だけのセレクトとさせてもらいました。

襟を立ててステッチを見せて着るのもかっこいい。

古着全般に精通したデザイナーらしい佇まいです。

こちらはNativeVillageの格子柄のパンツに合わせて、スウェード素材の赤いバッグが良い差し色になってくれています。

内側にはボアベストを重ねて、防寒もばっちり。

こちらは濃色のコーデュロイパンツをベースにダークトーンに合わせた感じ。

こちらは完売したサルエルパンツに合わせて。

イエローはモカのコーデュロイパンツに合わせて。

トラッドやミリタリー、ワーク、そして民族衣装までもを見回しているデザイナー宮田さんらしいコートです。この前ご近所の洋服屋、「shifuku(シフク)」さんで店主と立ち話をしていた時のこと。シフクさんには店主の好みが炸裂した古着がごった煮のように絶妙な感じで混ざり込んであるのですが、この前来た若いお客様があるトップメゾンの古着を取って「これこの値段でいいんですか?」「高く売れそう」と言って買って行ったそうです。「高く売れそう」に猛烈な違和感を感じながらも販売したそうですが、シフク的には面白がって買ってくれる服好きが喜んで買って着てくれたらいいな、、という気概で続けていた古着だけに、ちょっとショックな出来事だったようで、もう古着は減らしていくとのこと。(と言いつつ好きだからまた買付してきそうだけど)

古着は僕も大好きで、お店を始めたあたりから行く回数は減ったけど、やっぱり面白い洋服に出会う回数が多いのは古着屋な気がします。洋服が純粋に好きな人やデザイナーにとっては宝の山かもしれません。特にワークやミリタリー服には必ずデザインに意味があるから面白い。宮田さんもそこにハマったデザイナーの一人だと思いますが、男臭い硬い洋服を、ニコニコしながらクシャッとして柔らかくしてくれるデザイナーです。やっぱりその世界観から眼が離せないブランドです。

 

 

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