シェイプメモリー
先日、忙しない都心の朝、電車の改札へ向かう階段で仲睦まじい老夫婦がピタッと寄り添って手を繋いで階段を一段づつ丁寧に下っていました。見た瞬間に癒された僕は、なんとなく彼らの後ろを一緒にゆっくりと階段を下ることにしました。少し近づくと、小さな声で「いち、に、いち、に」と歩幅とタイミングを合わせています。階段が終わると照れくさそうに手を離す二人がまた素敵でした。
今日はまったく同じ生地を裏表に使用して、突き合わせで二重にした、いわゆる無双仕立てのコートをご紹介したいと思います。

NO CONTROL AIR キモノカラーコート ¥51,700(税込)ベージュアンバー
アンバーと付くだけに、言われてみればほんのり赤味がかったベージュです。コートは人によって必要なタイプが異なり、毎年各ブランドでらしさのあるものをセレクトしています。このNO CONTROL AIRのコートは、「温かいコート」をお探しの方にはお勧めしていません。温かさを売りにしたコートではなく、長い季節で着用できる良さのあるコートです。
年が明けて1月は皆さん当然真冬のコートを着ていますね。2月中旬辺りまではそれが大多数です。しかし全国の百貨店が「春一斉立ち上げ」を謳う2月20日あたりになってくると、春のコートを着たいと思う方が少しづつ現れてきて、アパレル勤務の人たちは春物が通常です。そしてさらに3月になってひな祭りのあたりになると、まだまだ寒さは残るものの、かなり多くの人が春のコートを着たいと思いながら、「着るものがない」ということになる。このコートはインナーに着るものを変化させながら、今の時期から年内、そしていったん着なくなってまた2月後半からおそらく最終は入学シーズンくらいまで着るコートです。長くなりましたが、ようするに春のコートも兼用したい方にお勧めしたいコートです。だから、「温かいですか?」って聞かないでくださいね。

この襟の合わせが着物のようで、このネーミングです。襟元がすっきりしているので、しっかりしたケープなどを使って重ね着すると真冬にも着るコートになりますね。またケープが似合いそうなデザインです。

フロントは全てボタンで、比翼仕立てでボタンは見えないようになっています。

この袖付けや肩の傾斜はNO CONTROL AIRらしい佇まい。

裏地にも表生地が使用され、縫い合わせに見返しを使わず、少しだけ裏地側に控えることでステッチをいっさい表に見せないのもこの仕様の特徴です。このキモノカラーにとても合っていると感じます。

内ポケットが左側に

形状記憶なので、高密度だけどシャカシャカ音はいっさいなく、小さくまるめても天然素材のようなシワはまったく付かない。旅行の時などにもお勧めしたい軽いコートです。

こんな冬のコートがあってもいいのかなって思いつつ、僕はこういうコートは持っているので、同じシリーズのテーラージャケットタイプを密かに個人発注いたしました。

内側はfreemanBのカシミアをレイヤーしています。

こちらがブラック。さてどちらも捨てがたい色ですね。コートが主張して、コートを着たらそれだけでかっこいい!というコートも持っていたいけど、他の洋服を引き立てながら幅広いスタイリングに寄り添ってくれるコートも必要です。今回はパンツスタイルだけですが、ワンピースやスカートにも。

シワ感は出るんですが全然嫌じゃないし、むしろかっこいい。さりげなくクタクタっとした襟元も最高です。春は最終袖捲りしてTシャツに羽織って欲しい。
あの朝見かけた素敵な仲良しの老夫婦は、実はすごくオシャレでもありました。お二人ともオシャレで、写真を撮りたくなる衝動を抑えて、後ろを歩いておりました。奥様は髪の結き方も素敵で、肩からかけた手編みらしきケープの色も柄も最高にお似合いでした。ご主人は全体にグレートーンで、濃い茶の少し背の高めのハットを被り、手入れの行き届いたピカピカの茶色い革靴が気持ち良い素敵な紳士です。
あの朝見た、あのご夫婦に色違いで着てもらいたいコートです。