晩夏初秋にむけて
一番暑い季節を迎え、いつもながら店内では季節のオーバーラップが起こり、、暑い最中ラック1本はびっしり秋物が掛かっている。本格的な秋物のご紹介はお盆休み明けとなりそうです。(暑いのでできる限り今すぐ使えそうなものから)今日は夏物から、シンプルなTシャツのご紹介です。
NO CONTROL AIR 王妃綿120/2天竺Tee ¥13,750(税込)グレー
我々のような職業ですと、あまり外を歩きませんし、なんといっても良かれ悪しかれファッション業界のサイクルが染み付いておりますので、お盆明けの百貨店を含めた業界の秋冬シーズン立ち上げには自然と順応して、暑かろうがなんだろうが、秋物に袖を通すことを意識しますから、この季節に意外に欲しくなるのがインナーに着続けられるサイズ感や素材感のカットソーなのです。羽織やジャケットのインナーにぜひお勧めしたい、優しい肌触りのTシャツです。
素材は南インドの超長綿を用いた120/2(ひゃくにじゅっそう)の天竺で、「しなやか」「滑らか」「とろみ」のある生地となっております。40/2(よんまるそう)から60/2(ろくまるそう)あたりが標準的なTシャツであることを考えると、このTシャツ素材がいかに細番手でしなやかであるかがお分かりいただけると思います。
ちなみに、わかりやすいかもしれないのでブランド名をあげて比較すると、ゴーシュのTシャツは100/2(ひゃくそう)の度詰です。つまり細番手ですが糸をたくさん使っているため、番手に対してけっこうしっかりしていると感じます。そしてCLOSELYの定番Tシャツは80/2(はちじゅっそう)です。このTシャツはその中では最も糸の細い120番手の双糸で120/2です。程よく高密度ですが、さすがにかなりの細番手ですので薄手のTシャツに仕上がっています。
特徴はなんといってもこのサイドシームが斜めにずれていることからもお分かりの通り、大きく斜行していることでしょう。ここまで細番手のジャージ素材は斜行しやすいのが特徴でもあり、それをデメリットと捉えると「そういう生地は使わない」という発想になりますが、さすがNO CONTROL AIR。その特徴を味方につけ、デザインとしていい感じに主張させています。
脇だけでなく、裾の折り返しの仕様もわざと斜行が強く出るように仕向けた長さにデザインされています。なんだかニュアンスのあるバルーンみたいで膨らみを感じます。
この襟のツケもそう。
昔の技術がなかった時代のアメリカTシャツの斜行とは異なり、わざと斜行が目立つようにデザインすることで、細番手で張り付きやすい素材感に膨らみを持たせています。
袖はすっきりとして肘上までくる半袖です。ハイブランドの作るTシャツのような雰囲気を持っていますので、晩夏初秋に向けて少しキレイめに着てみたり、購入した新しい秋物のインナーに着てみたりしてはいかがでしょうか。
カラーはベーシックな3色展開です。
ホワイトはNO CONTROL AIRのドレープカルゼのキレイめパンツに合わせて。
サイジングや斜行を生かしたふっくらさも手伝って、体に張り付く感触は強くはありません。
グレーはSP(エシュペー)のワイドチノのベージュに合わせています。パンツはモデルにはやや大きめの1サイズですが、見た目のバランスは悪くなかったので使ってみました。
グレーはトップ染でメランジ調の抜けの良い明るめのグレーです。
ブラックはグレーと同じパンツにレザーパンプスを合わせて。今回はスタイリングにありませんが、季節の変わり目に登場する定番素材のパンツ(デニムやチノなど)に合わせるのも、上質感が際立ってカッコ良いのでおすすめです。
こちらは夏っぽく完売したYUIのレイヤーパンツに合わせて。
NO CONTROL AIRは、昔大阪発で大流行した(僕は勝手にそう思っている)ユニセックスファッション文化を継続的に現代のファッションまで昇華させてきたブランドだと思っています。デザイナーは僕と同世代の男性ですが、スタッフの多くが若い世代の女性ということもあり、いい塩梅におじさんのこだわりと若者の感性がコラボした内容なのかもしれません。このTシャツも、どの世代が着ても違和感のない、ある種の普遍性を感じ得る雰囲気を纏っています。晩夏初秋に向けて少し上品にも着ていただける上質なTシャツです。