器用さより熱量
少し前に、「シンプルは好き、当たり前は嫌い」のお話をした際に、ゴーシュのモノ作りの中にその答えがあるように感じ続けているということをブログで書いたと思います。つい最近もそうですが、実は12年前のブログからそう書いています。だからオーダーが多くても少なくてもannabelleの中核にはゴーシュが必要なのだと。
ゴーシュのモノ作りはとても職人的で、それはゴーシュのお二人が二人ともビッグメゾンのパターンナー出身であることが裏付けているように思います。自ら「服飾オタク」と言うほどに、高校生の頃から独学でパターンを作り、洋服をすでに作っていたそうです。その上で、研究熱心なのは当たり前で、良い素材を着心地の良いオーソドックスなパターンに載せて、少しのアイデアで新しいものを作るだけだと、実に淡々とした側面がまたゴーシュらしさを物語っているように感じます。シンプルなのに、遠目で見てもゴーシュだと分かる個性が潜んでいるところが凄いと思うのです。表現は違いますが、お店として、スタイリングとして、そんな個性が放てればと思い憧れているのです。今日はゴーシュらしいボトムスとトップスのご紹介です。
ゴーシュ ヒッコリーベリーワイドパンツ ¥34,100(税込)
今シーズン、スレンヘリンボーンの方は完売してしまいましたが、シーズナルファブリックで、こちらの10ozの軽いインディゴとキナリのヒッコリー素材はとてもおすすめです。ヒッコリーらしいカジュアルなスタイルから、程よく綺麗めな印象のスタイルまで楽しめるように感じる素材です。
ウェストはゴムと内側に紐です。
裾は太めのダブル
両サイドポケット
経糸が未晒しのオフホワイト、緯糸がインディゴです。新品から3回ほどのお洗濯は、念の為単独の手洗いをお勧めいたします。
ポケットは片玉縁で仕舞い込みができるフラップです。
少しコードレーンのような凹凸感のある素材の表情も相まって、モノトーンで綺麗めを意識するとそうなります。普通の平織りのワークっぽいヒッコリーではこうはならないので、なんとなくそういった小さなこだわりが垣間見えると、ゴーシュらしさを感じるのです。
展示会の時から、ちょっと綺麗めに合わせたいなって、思っていたパンツでした。
アウターにHAVERSACKのブルゾンのようなショートボレロを合わせると、グッと今の気分が表現できる。履ける人は思い切ってヒールを履いてもらいたい。
ゴーシュ ループ天竺クルーネック ¥16,500(税込)
先ほどのスタイリングでトップスに着ていたのがこちらのブラックです。ゴーシュをまったく着たことがないお客様に、一番最初にお勧めしているのはシャツかカットソーです。それはゴーシュの1番の特色であるパターンメイキングを実感しやすいから。
この小さなクルーネックはデザインなので好みはありますが、ゴーシュの代名詞的な存在です。こんなに野暮ったくない小さなクルーネックってあるんだな、、といつも感心しています。現に、店頭では「小さな丸首が苦手」と言う人も「これはいいのよ」って言いながら買ってくださっていることもあるくらいです。
素材は繊維長のあるコットンを使用した吊り編み機のループ天竺で、とても柔らかくしっとりとしています。裏毛とは異なり、スウェットよりもTシャツに近い感覚のトレーナーです。春のアウターのインナーとして、また初夏には一枚で活躍するオールマイティーでおしゃれなトレーナーです。
色は3色展開です。また、こちらも店頭で売れてきておりまして、在庫は僅かです。気になった方はお早めにどうぞ。
グレーはスレンヘリンボーンのパンツのご紹介の際にご紹介していました。この上にHAVERSACKのデニムブルゾンを着ていましたね。
ライトベージュはARTEPOVERAのヴィンテージシーツのリメイクパンツに合わせて。着用感はピタッとしたトップスですが、袖付けなどに工夫を凝らし、動いた時に裾が持ち上がることもなくとても快適な着心地が好評です。例年似たような商品をご紹介していますが、実は毎回サイズ感や素材が違ったりします。今年のものはコンパクトで着丈も少しだけすっきり短めです。
ゴーシュは現在ブランドスタートから25年が経ちますが、ゴーシュのお二人がブランドスタート当初から注目をしていて、なおかつ現在も仲の良いブランドがannabelleにも並んでいます。
それはNO CONTROL AIRです。ブランド発足当初、たまたま同じ「合同展」に出展していたそうで、ゴーシュの泉さんは、初めてNO CONTROL AIRを見た時、「なんだこのブランドは??」と、頭の中が少し疑問符だらけになるような面白さを感じたそうです。ゴーシュの泉さんは、冒頭にも書きましたが洋服業界のエリートです。文化服装学院を出て、誰もが知る世界的なビッグメゾンで10年以上のキャリアを積んで独立して今に至ります。一方でNO CONTROL AIRの米永さんは、芸大の建築科出身で、趣味が高じて完全なる独学で今に至る天才肌です。洋服の常識をきっちり叩き込まれた泉さんから見て、当時のNO CONTROL AIRは不思議で仕方なかったのだと思います。しかしデタラメなだけでなく、しっかりと洋服として成立しているところに関心を寄せて見ていたようです。
それから数年、、両ブランドともまだまだ取引先がほとんどなく、暇すぎたために試しに交換販売ごっこを始めたそうです。大阪でNO CONTROL AIRがゴーシュを販売し、東京でゴーシュがNO CONTROL AIRを販売する。暇すぎて楽しんでいた企画が意外に盛り上がり、ブランド発足から5年目にようやく彼らの快進撃が始まりました。僕が神戸でゴーシュを見たのはその快進撃の始まりのあたりでしょうか。
偶然にもそんな両ブランドの関係を知らず、僕はannabelleの準備を始める中で、ゴーシュとNO CONTROL AIRのルックをプリントアウトして、並べてニヤニヤしていました。この2つのブランドを一緒に並べたら面白そうだなと。。
ちょっと違うタイプの洋服が所狭しと並ぶ店内は、時に混沌として見える時もありますが、一応自分の中では同じ「いい服」「面白い服」「新しい服」を目指して真剣に遊んでいる大人が作る服を集めているつもりです。ただ、みんなそれぞれ個性があって、そのルーツやルートが全く違うだけ。目指すゴールは同じ。時代に対応する器用さよりも、熱量を感じていたいと思います。ゴーシュはシンプルですが、とても熱量のある洋服です。