来春
毎年、式典を境にしてご紹介するお洋服の季節が変わるのが、自分でも気に入っています。特に西別府さんの装飾に誘われるように新しい季節に向かっていくような感覚は大好きです。2025年春夏、展示会を見ていて最も気になり、結果バイイングが多くなったものは「セットアップ」でした。式典でご紹介しているジャケット/パンツのようなセットアップもありますが、例えば同じ素材のベストとパンツとか、チュニックとパンツとか。そういったセットアップ。そしてもう一つ気になったのは、バイイングが多くなるほどではありませんでしたが、「ショート丈」でした。今日は展示会で気になるものだらけだったHAVERSACKから、ちょっと変わったパーカーのご紹介です。
HAVERSACK レイヤーパーカ ¥25,300(税込)
HAVERSACKはアナベルオープン当初にお取り扱いをしていて、いったん取り扱いをしなくなったブランドでした。いったん取り扱いをしなくなったブランドをもう一度というのは、、あまりないケースだと思うのですが、実は前職からお世話になっていたアパレル業界の先輩に「HAVERSACKのレディースが進化していて、絶対にannabelleに欠かせないブランドになるはずだから見て欲しい」と何度も言われたのがきっかけで、展示会を見に行ったのが5年ほど前だったかと思います。まさにおっしゃる通り、今や絶対に欠かせない存在になってきたと感じています。
こちらのレイヤーを楽しむパーカーは、定番的なバスクボーダーなどの少ししっかりした生地のカットソーの上にも着て頂けるようなイメージで作ったパーカーで、長袖との重ね着から始まり、タンクトップやキャミソールとの重ね着まで長い季節のレイヤリングを楽しめる、なおかつ他になかなか見つけられないデザインであることが特徴です。
なんだか、「前開きならいいのに」という声も聞こえてきそうなデザインですが、これがジップで前開きだったら、こんなにときめかなかったかもしれません。前開きのパーカーはシンプルで定番的なFABRIQUEさんのものがあるし、他のブランドからも山ほど提案されています。その中にはショート丈のものも多く見かけます。これはそうではなく、どこかメンズライクなアノラックパーカ的な要素があったからこそ、ブランドらしさも感じたし、結果他にあまり見ない可愛い洋服になっているような気がしています。
袖はややボリューミーで、着丈はショート。こういった極端なバランスは単品でデザインしたものではなく、かなり明確なスタイリングイメージがあってのものだと思います。
身頃とフードのバランスも最高です。
そして素材もいい。パーカーにしては細番手で、パッと見に反して意外に高密度でしっかりした素材です。ふんわりしすぎず、5月あたりにも心地よく着て頂けるようなドライなタッチもある素材です。
このパーカーは、先ほど言ったように「アノラック」をコットン裏毛でこなしたという側面もある一方で、通常の被りのパーカーをものすごく深いVネックにした、という見方もある。そして薄手のカットソーに重ねたりすると、ブラウス的な感覚でも着ていただける。
モノはいろいろな角度でよくよく考察すると面白い。「これはパーカーだ」という概念だけで見ていると、「羽織れる前開きが良かった」という結論になるかもしれませんが、大きなフードも相まって、「セーラーシャツみたいなブラウスだな」と思って見ていると、前開きではない残念感はどこかにいってしまい、とことんおしゃれなレイヤーを楽しみたくなる。
こちらはライトグレーのようなシルバーグレーのような色ですが、白っぽいので今回は全身白っぽくスタイリングをして見ました。こういったワントーンのスタイリングは気になる「セットアップ」に通づるものがあるのかもしれません。
ボトムスはゴーシュのスレンヘリンボーンの裾ダブルワイドパンツ。とにかく太いけど良い感じに綺麗にカジュアルが楽しめるワイドパンツだと思います。今回この素材のシリーズは、あえてこのワイドパンツだけのバイイングにしています。
この短さに、展示会では二人でテンションが上がりまくりました。アナベルで長い時間をかけて浸透させてきた太いパンツスタイルに今着るとしたら、こんなのがいいなって想像していたやつでした。
アウターにこんな色を合わせるにも今年らしくて素敵です。短い丈にショートブルゾンも良さそうですよね。
ブラックは同じくHAVERSACKのデニムパンツに合わせて。個人的にはこの組み合わせはブランドを象徴するバランスなのではないかと思っています。インナーがボーダーに変わったらまさにです。
どうですか?この春着てみたくなりませんか?きっとスカートに合わせてもかっこいい。
深いVネックもあって、肩の収まりがしっかり決まった服というよりも、こんなふうに少し抜いてきても感じのいい洋服です。その辺りはご自身の心地の良いところで合わせてみてください。
下に着たklauseさんのシャツの裾をパンツから出して、レイヤリングを強調してみました。こんなレイヤリングがカッコよく出来るのも、このパーカーの丈が短いから。普通の丈ではなかなか良いバランスになりません。レイヤリングが上手に見えるコーディネートに興味がある人は、こういった洋服を一つ入れるとかなりよく見えますよ。
HAVERSACKは今シーズンおすすめのものが多いブランドです。今までアナベルで提案してきたふんわりしたワイドなボトムスに、良い感じのスパイスをプラスしてくれる存在になるといいなと思っています。まだまだ寒い立春ですが、店頭ではバシバシと春のお洋服が動いています。秋は意外に立ち上がりがゆっくりなのですが、春はいつも早い!今回のパーカーのように、冬物と混ぜ合わせて着られるものもたくさんありますので、ぜひスタイリングに入れてお楽しみください。