リメイクはセンスが命
アナベルはオープン当初の12年前から、パンツを中心にしたスタイリングを提案したいと考えてセレクトをしてきました。それもあって、あらゆる展示会で一番最初に目につくのはパンツです。そしてそのシルエットやその時の気分、さらには自分の好みを加味して「次のシーズンはどうしようかな?」ってバイイングしています。僕は基本的に20代前半から「テーパードシルエット」や「バルーンシルエット」が大好きで、正直、僕自身はそれ以外をほとんど穿きません。しかし女性に客観的に提案するにあたって妻に穿いてもらい、そこからスタイリングの想像がすぐにつくかどうかや、穿いた瞬間にどう思うか、気になったスタイリングの写真などを膨大に保存しているのですが、その中にあった何かに重なったときなどは要チェックです。過去の自分も今の自分も気になっているということですから。
ARTEPOVERA スウェットリメイクパンツ ¥20,900 オリーブMIX
80年代のフランス軍のアンダー用のスウェットパンツをリメイクしたものです。80年代というとリアルに通ってきた年代なだけに、ヴィンテージとか言われてもピンときませんが、少し前に古着屋さんで見たリーバイスの赤耳の値段を見てあまりの高額に驚き、取っておけば良かったと後悔したばかりですので、80年代はヴィンテージなんだと最近ようやく認識してきたところです。
ウェストはリブの切り替えで、内側に紐とストッパーが付いています。ゴムはあんまりキュッと伸縮するタイプではありませんので、ウェストあたりで収まりの良いところで穿いていただいて、紐で軽く抑えるようなイメージです。
フロントはかなり深いタックが両サイドについたデザインです。
裾はロック始末で内側に当て布をした仕様になっており、僕の中では実はこういったデザインのこなしが重要です。カットソーが今のファッションのキーアイテムだということはバイヤーのほとんどが認めるところだと思うのですが、トップスはそう気にしませんが、ボトムスは一歩間違えると部屋着になりかねない危険性もあるので、カッコよく提案したいこのようなパンツの仕様は、細かくチェックをして必ず穿いた雰囲気をよくよく観察します。これ一つで、穿いた時のシルエットが、感覚的な言葉で申し訳ありませんが、シャキッとします。それはレザーのブーツやヒールを履いてもカッコよくなりそうな雰囲気ということです。
バックスタイルにはタックはなく、スウェットインナーパンツを解体してリメイクとして組み上げていることがよくわかる、パーツによるちょっとした色の違いが楽しいパンツだということがわかります。
このパンツはリメイクであるため、1点づつ個体差がございますが、今回はAカラーのほうで撮影をいたしました。色の微妙な違いやバックスタイルでのポケットの配色の違いなどがありますが、全体の雰囲気を左右するような個体差はありません。そして今回のバイイングのポイントは、実はシルエットや全体の太さです。ものすごく太いパンツやテーパードのあるバルーンワイドなどはアナベルの中心的存在ですのでもちろんたくさんあるわけですが、気になりつつもあまり目立ってバイイングできていないシルエットがこのようなワイドバギー的なシルエットのパンツです。
ほぼストレートシルエットではありますが、タックの効果もあって穿いて動くとバギーっぽく感じる絶妙なシルエットのパンツです。今回ヒールで撮影しておりますのは、155cmの妻ですと下に擦る、、とまでは行かないまでも動いた際に擦りそうなギリギリのところでしたので、ヒールにいたしました。おそらく数センチ背が高いだけで違ってくると思います。
スウェットパンツですので、カジュアルに振り切ればスニーカーやマウンテンパーカーでも日常着としてかっこいいのですが、今回はバイイングした際のイメージに忠実にカッコいいスタイリングを目指してスタイリングしています。
上からこんな上質感のあるウールのコートを着ても素敵です。ちなみにこのコート、やばいくらいあったかいそうです。今後ご紹介予定のNative Villageのコートです。
スウェットパンツやもう少し広い意味で「ジャージ素材のパンツ」は取り入れてみたいと思っている方は多いと思います。ベルベットやフリース素材のパンツは昨年もたくさん目につきましたから。アナベルはけっこうそこに対しては慎重派ですが、やっぱり「これは!」と思えるものは紹介したい。リメイクは「センス」が命だと常々思いながら見ていますが、古くて価値のあるものをわざわざ解体して洋服を作るわけですから、「今」の感覚を存分に載せてこそ、その意味合いが深まるように思っています。その点でARTEPOVERAのリメイクは、18年ほど前に見たその時から色褪せない魅力を持っています。気になる方はぜひ。