annabelle

入口と出口

僕が高校1年生だった1989年、アニエスをはじめとする「フレンチカジュアル」と呼ばれる少し爽やかなボーダーを着るスタイルが流行していました。ジーンズは色の薄いものやホワイトジーンズが中心で、オシャレな人はベレーを被ったりもしていた。そのフレンチカジュアルのおそらく火付け役となったのは、当時人気が出始めた「セレクトショップ」の人たちが海外からバイイングして紹介していた「セントジェームス」だったと思います。いずれも高くて買えなかった当時のわたくしは、原宿のシカゴのダンボールで、五百円のボーダーTシャツを探しておりました。今日ご紹介するカットソーは、僕がその時代に初めて触れたセントジェームスのバスクシャツを思い出すようなタッチでした。

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FIRMUM ビッグバスクボートネックシャツ ¥16,500(税込) ナチュラル

僕と近しい世代の洋服好きで、あのボーダーシャツを着たことがない、触ったことがないという人はいないのではないでしょうか。ぼくもかなりお世話になりましたし、FIRMUMのデザイナーも大好きだったと語っています。大好きであることを前提として、「でもやっぱりファッション業界でやっている以上、変化は求められるし、それに応える必要はあるんじゃないか」とも言っていました。僕もそう思います。今回のこのビッグサイズのカットソーは、彼らなりの自問自答へのアンサーなのかと感じています。

ボートネックを少し狭く、なかなかネックの詰まったデザインです。僕は今シーズン気に入ってこちらを個人オーダーいたしました。男性も小柄で細身の方はXSがちょうど良いかもしれません。僕は170cm、65kgでMをかなり大きめに着ています。Sでも少し大きめです。

サイズはセントジェームスには見られないオーバーサイズなデザインですが、16番双の空紡糸を使用した天竺で、薄すぎず厚すぎない軽くて年間定番的なドライタッチの素材感は、まさにユニバーサルなカットソー素材なのだと感じます。決して高級素材というわけではないけれど、本当に良い素材です。

裾には前後差とスリットがございます。

秋冬に特化した風合いではなく、裏面もさらっとした天竺素材です。

ネイビー

普段、ネイビーよりもブラックを選択するイメージの強いFIRMUMが、あえてネイビーを選んでいることにも、セントジェームスへのオマージュを感じてしまうのは考えすぎなのでしょうか。ちなみに、フレンチボーダーと言われるジャージ素材のボーダーがマリンボーダーと言われるのは、視界の悪い海上で仕事をする水兵の視認性を高めるために着用されたことからそう呼ばれるようになったようですが、船の外に出ることの少ない船長は、無地を着用していたそうです。まさに今回のこのような色のものを着ていたのでしょう。

とっても大きなサイズであるということは、サイズスペックを見ていただくとわかるかと思います。しかしスタイリングはバランスを遊ぶことこそが楽しむポイントだと思っています。この洋服はどう着たらかわいいか?かっこいいか?それを考えるのがファッションの楽しみの一つです。

今回はアナベルで多く提案している「ワイドパンツ」の中から、バルーンタイプとストレートタイプの2つにコーディネートしてみました。こちらはバルーンタイプに合わせています。

着丈も女性には長めですので、股上が長い、ゆったりしたタイプのパンツによく似合うことがわかります。つまりFIRMUMやNO CONTROL AIRのボトムスにはだいたい似合います。それらをお持ちの方は、それに合わせることを想像してご覧ください。

ネイビーは僕自身の好きな感じを妻に着てもらいました。僕は90年代に最も影響を受けてきていますから、個人的にはこの下にシャツを着たくなってしまいます。今なら長いシャツもかっこいい。その上にベストを重ねてもいい。想像は膨らむばかりです。

FIRMUM ビッグバスクボトルネックシャツ ¥16,500(税込) ナチュラル

この背の高いボトルネックはFIRMUMが何年も前から様々な素材で作っていますから、きっとデザイナーのお気に入りなのだと思います。僕も6年ほど前に買って、久しぶりにこの前引っ張り出して着て、気分が上がりました。

ネイビー

色はボートネックと同じ2色展開です。

ボトルネックのナチュラルは、フリース素材のバルーン型パンツに合わせて。大きめで着丈長めのお洋服をバランスよく着る王道とも言って良いスタイリングパターンです。靴をヒールにしたり、レディースパンプスにしたり、ショートブーツにしたりすると、それぞれ違った雰囲気を出してくれるはずです。

好みのはっきり分かれるデザインかもしれませんね。こういうスタイリング、する人はするけどしない人はしないですもんね。アナベルではオープン当初の12年前から、ボリューム感は違えどずっと中心にある雰囲気です。それは、僕がかっこいいと思える大人のスタイルの、入口にも出口にもなるからです。

ボトルネックのネイビーは、唯一ストレートシルエットのワイドパンツに合わせてみました。ボトムスはゴーシュのベリーワイドパンツです。こちらもシルエットは違えど、股上が深い(長い)ということが一致した特徴です。

一般的にはバルーンタイプのパンツと比べると、こちらの方が取り入れやすいかもしれませんが、アナベルの顧客の皆様はもしかしたら逆かもしれませんね。なぜならアナベルはバルーンシルエットのパンツを得意にしているから。

上からCLOSELYのニットベストを合わせて。いつものことながら、これをどう着るか?考えるところから楽しみましょう。今回はスタイリングにありませんでしたが、サスペンダーパンツやサロペットとは相性がいいでしょう。スカートはロング丈でボリュームのあるものは似合うでしょう。また、セーターと違ってタックインもしやすい生地感ですから、タックインに羽織というパターンもいいでしょう。暑がりな方や車の移動が多い方は、この上にダウンでもいいのかもしれません。

皆さんならどう着ますか?同年代の方は90年代を思い出しつつ、考えてみるのも楽しいかもしれませんね。ファッションにもリバイバルという言を使いますが、昔のファッションがそのまま流行るということはありません。昔のファッションに感化された誰かが、必ずその時代に合わせた別な形で再提案、表現しています。このビッグサイズはこれそのものが表現なんだと思います。あとは着る側がどう着るか?をちょっと楽しみにデザイナーも見ているかもしれません。

 

 

 

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