盲点
皆さん店頭でコートを真剣に見る季節になってまいりました。日々、暑さが戻ったりもしていますが、1週間先、2週間先の気温はやっぱりもう秋本番です。コートはたいていの方が「コートを買おう」と思って見ていますから、意外に気温が下がる前にどんどん売れていったりするものです。セーターは寒くならないとなかなか買う方が少ないですが、コートは買おうと思って見ている分、気に入ったものが見つかると季節が先でも購入するということなんだと思います。アナベルもコートのご紹介を進めていきたいと思います。また、本日ご紹介するコートは、ブランドの定番コートであるため、昨年のカラーも通販ページに並べて掲載しておきます。ちなみに昨今の物価上昇により、昨年のものの方がお得な価格にはなっておりますよ。
maison de soil キルティングコート ¥57,200(税込)ダークベージュ
アナベルのホームページなどを昔から見ている方にとっては、お馴染みのコートです。昨年はスタッフ横やんおすすめのコートとしてブログも書きました。横やんが色違いで3着も持っているから、「それってそんなにいいの?」てな具合で興味を持ってバイイングし始めたコートです。ブランドはオープン当初から取り扱っているものですが、「秋冬のコートにしては薄いのでは?」という理由で僕がバイイングを避けてきたコートでした。でも目の前でスタッフがずっと着ているのを見ていると、なるほどな、、と思うこともありますね。
大きなラグランスリーブに小さなノーカラーのクルーネックがこの上なくすっきりとしています。このコートの使い勝手を見ていると、このノーカラーや少し小ぶりなクルーネックというのがとても重要です。
フロントは比翼仕立てで表地と共布のくるみボタンを使用しています。
両サイドに箱ポケ
バックスタイルを見ると、センターベントがございます。ゆったりはしていますが、かなりのオーバーサイズも存在する昨今のコートの中で、決して大きめな方ではなく、むしろスタンダードに近いサイズ感ですので、足捌きを考えるとこの長さのベントが必要なのだと思います。
ベントはボタンで少し長さ調整が可能です。
このコートの最大の特徴は、表地がコットンシルク、裏地がやや厚地のコットン素材で、真ん中に裏地と同クラスのコットン素材を一枚挟んでいるということです。通常は「中綿ポリエステル」が真ん中に挟まってキルティング加工をすることが多いコートのキルティング生地において、冬のコート生地としてはより珍しいと言えるのではないでしょうか。やっぱり「温かさ」を重視したらそうなりますから。しかしそれこそが、僕がバイイングをしなかった理由であり、横やんが気に入って3着も持っている理由でもあるのです。
今シーズンは、ダークベージュとブラックの2色展開です。なぜ、温かさを重視していないコートに魅力を感じるのかの答えは簡単で、「他に探してもないから」です。軽くて、キルティングなのに硬くなくしなやかで、温かさを重視していないとはいえ、それなりに暖かいし、重ね着もしやすい。それにけっこう早い時期からスタイリングに取り入れることができる。そしてだいたい12月の中旬あたりまでは一番上に着るコートとして十分な役割を果たす。さらに冷え込む1月、2月、横やんのスタイリングを観察していると、コットンのオーバーコートの下に、まるでライナーのような感覚で重ね着をしている。さらに3月に入り、しばらくは明るめのカシミアセーターなんかとコーディネートして、だんだん春に移行する。そんな越冬する光景を見ていたら、「なるほど」と思うのです。
キルティングでは張り感がでてサマになりにくい羽織感覚のスタイリングもお手のもの。
肩、袖周りにはゆとりがあるものの、全体にはオーソドックスなサイズ感のコートです。
冬はコートがスタイリングの主役になりますから、そのバランスを整える小物たちの色、デザインがとても重要です。
ブラックはボトムス部分で配色を作ってスタイリングしてみました。ブラックはスタイリング全体の引き締め役として欠かせませんが、主役に転じた際の重たさは皆さん気になるところですよね。1週間に1〜2回くらいはブラック中心のスタイリングパターンを持っていると良いと思うのですが(相乗効果)、ワンパターンになりがちです。冬だとストールのワンポイントが多くなりますが、たまには下に配色を考えるのも面白いと思います。
そんな時はノーカラーのすっきりさを活かしてストールもしない方が全体のバランスは良い気がします。
さて皆様のコート事情はいかがでしょう?僕は洋服の中で一番よく買うのがパンツなのですが、それがコートだという方もいらっしゃいますよね。そういう方は完全に感覚で購入を決めるのだと思いますが、やっぱりコートは悩みながら質問をたくさんして購入に至ります。「温かいか?」「軽いか、重いか?」「素材は?」「お手入れは?」「脱ぎ着がしやすいか?」「着る時期は?」などなど、挙げ始めたらキリがない。やっぱり今お持ちのコートとはキャラが被らないものを足していこうとする方がほとんどです。
コットンやキルティングコートはあるのでウールの綺麗めが欲しいとか。逆にウールやお仕事用のトレンチなんかは持っているからダウンが欲しいとか。僕がこのコートで発見したのは「薄くて程よく温かいコート」を求めている方も結構いらしゃるということでした。長い期間活躍するけどコットンコートとは違った魅力がある。光沢感もあって華やかさも感じる。何より軽い。意外に長いこと気がつけなかった、僕にとっては盲点にあたるコートでした。