美しい言葉で綴られたちょっと不思議な物語
奥手なのか慎重なのか、なんなのか。ぼくは新しいブランドを検討する時、たいてい結構な時間をかけて考えるというよりは、意識し続けてやっぱり気になったら展示会に行ってみるスタイルです。今まで一番時間がかかったのは、ASEEDONCLOUD。たぶん8年くらいずっとコレクションはチェックし続けていました。アナベルがメンズだったらすぐに取り扱いしていたと思います。なぜなら僕がすごく着ているから。レディースにどうか?アナベルのスタイルに上手く溶けるか?そんな想像をしながらずっと気にし続けていたわけです。今日は新しいブランドのご紹介です。
quitan(キタン) 刺繍かディーコットンチュニック ¥46,200(税込)
キタンは日本のブランドで、たしか2020年にブランドスタート当時から展示会の案内をいただいていたブランドでした。最初から色々気になるブランドでしたが、コロナ禍ということもあり、なんとなく傍観していましたが、ようやく昨年の展示会に赴き、2023AWシーズンからお取り扱いが始まりました。今シーズンは少なめのご紹介となりますが、できる限り特徴のわかりやすい商品をバイイングしたつもりです。こちらはしっかりとしたインドの手紡ぎ手織り(カディ)のコットンチュニックです。
ボートネックはやや広めで、袖付けのあたりに施された刺繍はかなり凝った立体的な刺繍で、デザイナーが古い資料から見つけ出したものを再現したそうです。とっても迫力がある。
インドのチカンカリ刺繍と、生地に穴をあけて網目状に刺繍を施す高度な技術を要するジャリ(jaali)やぷっくりと膨らみのある立体的な楕円型のファンダ(phanda)という刺繍を駆使した作品のような刺繍が素敵です。しかも生地は上質なカディーコットン。
シルエットは大胆な切り替えによって形成されています。着ると最高です。
サイドスリットの両端にも刺繍が施されます。
袖口は写真ではわかりづらいのですが、身返しをつけて表にステッチが響きにくいように手まつりで処理しています。キタンのコレクションは全体の構成に惹かれますが、商品ひとつひとつの細やかで丁寧なつくりも魅力です。
写真にはありませんが、細長い特徴的なブランドネームを縫い付ける糸だけ配色です。感覚的なデザイナーの顔が思い浮かぶさりげないアイデアです。
ブルーイングリーンのコーデュロイパンツに合わせて。
秋冬も重ねて着ていただけますが、見ての通り春夏シーズンも大活躍。ぜひたくさんの季節で着すぎないようにたくさん着てください。
全体にボリュームがある感じではなく、トップスは華奢さが際立ち、ウェストから下がふわっとした女性らしいシルエットです。
こちらはSUSURIさんのベルベットのパンツに合わせています。
この切り替えシンプルだけどほんとうにかっこいい。スリットが入っているのも大好きです。
上から羽織ると脇の分量感が際立ちます。
quitan (キタン) リネンペイントベスト ¥44,000(税込)
これも見た瞬間にニヤついてしまったベストです。丈が長いんです。すごく長いんです。素敵ですし、個性的。どうやらイギリス軍のか何かのレザーベストをモチーフにしたとこのことですが、デザイナーの宮田さん(女性)が面白いところは、興味の幅が異常なくらい広いこと。軍物やワークウェア、古着に対する造詣も深い。そして何よりこんな着丈のベストを作っちゃうくらい、目の付け所が独特。大好きなデザイナーです。
トップ釦の位置はフリーで、小さめのクルーネックです。そして全体が断ち切りの仕様です。
裾は丸みのあるデザインで生地はとってもしっかりとふっくらとしたリネン素材です。これまた季節を跨いで好きな時にサッと手に取ってもらいたいベストです。
裏地には心地のいいオーガニックコットンを用いています。
脇には長めのスリットが。
気合いの入ったオリジナル釦は手彫りです。たかが釦。されど釦。洋服の印象を左右する大切な付属品です。
背面です。全体に見られる白い部分は顔料を使って手で書いたペイントですので、1点づつ多少違います。印象が変わるような物ではないので、今回は在庫分も同色扱いで販売させてもらいます。
HandWerkerの定番ワイドデニムにチュニック、そしてベストです。
長いチュニックにも違和感がない長さです。
デニムスカートにカシミア。そしてベスト。見ての通り、アームホールが大きいので下には様々スタイリングが可能です。
前を開けた感じも好き。
ストールを合わせてみると秋冬感が増してくる。
quitan(キタン)というブランド名は、「綺譚(きたん)」という日本語から発想した名前です。美しい言葉で綴られた不思議な物語といった意味合いで、さまざまなジャンルからデザイナーのフィルターを通した「素敵」を抽出したデザインは、意表を突かれる側面もあってワクワクします。ワークもあればミリタリーもあり、民族衣装もあればドレスもある。なんだか気に入った感覚の古着屋を見つけたような心境になるブランドです。ぜひ今後の展開も楽しみにお待ちください。