はいいろオオカミ+花屋西別府商店
空想世界-sense of wonder
不思議の家系の物語
部屋にそそぐ自然光を遮り、暗くすることに躍起になっていた
二人の趣旨が、今はよくわかります。
自然光で見てワクワクしていた作品たちは、
暗い部屋の隅々で、楽しそうに静かな明かりを燈している。
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西別府久幸 作
「小人の想い」
展示にお越しのお客様は、皆さん熱心にストーリーにも
目を通してくださり、とても嬉しく思います。
現在の西別府さんの作品の中核を担う「小さな~」シリーズには、
お話した通り、4つの物語が存在します。
そのお話を読んでいただくと、作品への愛情はより強くなる。
本日は、「小人の想い」の物語をご紹介いたします。
小人の想い
毎朝、目を覚ますと枕元に増えてゆく、何とも小さな小さな花束。
姿の見えない小人の小さな想いが花束となって私の元に届けられる様になり、
既に40日目の朝を迎えていた。
姿の見えない[何か]を私が[小人]と断言するのには、理由がある。
それは今日から二月程前、秋晴れがとても気持ちの良い朝のこと、前日まで
続いた強い風雨がまるで嘘だったかの様に、この静かな森には暖かな日差しが
注がれていた。
木漏れ日の中にふと目をやると、大きな切り株の上に他の木の幹から落ちたらしい
少し大きな枝が横たわっていた。私はそれを何の気もなしに退けて、その切り株に
腰かけた。
森で採集した木の実をハンカチーフに広げてみたり、冬ごもりの準備だろうか、
せわしなく動き回る鳥たちの様子を眺めていたりして半刻程の時間をそこで過ごした。
正午を知らせる鐘の音を遠くに数え、切り株から立ち上がると、そこにはどこまで
続いているのか先が見えない、二寸ほどの穴が空いていた。
なんとなく気になりその穴を覗き込んでみると、遠くに小さな灯りの様なぼんやりと
した光が瞬いていた。
私は少し驚き身を引くと、小さな風鳴りに混じって「спасибо- ありがとう-」そうとしか
聞こえない音を私は耳にした。
その話を家に帰って母親にしてはみたが、誰にも信じてもらえず、しばらくして
私自身もそれは勘違いだと思うようになっていた。
ところが、ある日、私が目を覚ますと枕元に人が作ったとは思えない小さな花束が
ひとつ置かれているのを発見したのだった。
私はその時にあの森で起こった出来事が夢でも、幻でもなかったことをはっきりと
確信した。しかし、その時にはもうこのことを誰かに話そうという思いも
不思議となくなっていた。
それから毎朝、私の枕元には[小人]からのささやかな贈り物が届くようになった。
雨の日も風の日もそれは休むことなく、私の元に届けられた。
雨の日は花束を作る素材に窮するのか、小石や不思議なものが混ざっていることも
あった。私は届いた日にちごとにその花束を木の板に留めて保管することにして、
良く晴れた日は白い板に、雨や風、雪など天候の悪い日は黒い板にそれを留めた。
一方通行ではあるけれど私たちはその交流をひとつの儀式の様な厳かさを持って
遂行していたと思う。
この儀式がいつまで続くのか、そんなことを考えない日もないわけではなかったが、
私はこの[小人の想い]を毎朝受け取ることが日課になっていた・・。
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と、私はここまで読んで、先日亡くなったばかりの祖母の日記を閉じた。
祖母の大きな秘密を知ってしまった様で、(あのおおらかだった祖母は「それ」を
ささやかな秘密と言うかもしれない。)いたたまれない気持ちになった。
そして、私は目の前に山積みしている、木箱の中身をうかがい知ると呆然と立ち尽くした。
sense of wonder -不思議の家系の物語-より
はいいろオオカミ+花屋西別府商店 展
空想世界-sense of wonder
不思議の家系の物語
2020、09.12-22 ※16日水曜は店休日です。
11:00-19:00 annabelle304にて
9月20日(日)には、同じ展示空間で
花屋西別府商店を1日限定で開店します。
作品の展示とともにお楽しみください。
<お知らせ>
annabelle の「Shikiten~式典」の展示用に
お願いしたことから生まれたこちらのブローチは、
ストーリー外の作品として仲間入りをしています。
作品タイトルは「森のオクリモノ」です。
こちらの作品は、後半17日以降になりますが、
通信販売の準備を進めております。
準備が整い次第お知らせいたしますので、
遠方のお客様も楽しみにお待ちください。
宜しくお願いいたします。