God is in details.
仕事上、毎回コレクションはある意味楽しみに、
しかし眺める程度に見ています。
2021年は、久しぶりに大きな変化を感じることができる
内容だったような気がしますが、我々のお店などはそのような
劇的な変化を求めません。小さな変化を断続的に繰り返し、
その時の気分にできる限り忠実であれと願います。
そんな我々のお付き合いするブランドの中にあって、
とりわけ小さな変化を絶妙に表現しているデザイナーとして、
TOKIHOデザイナー、吉田季穂(よしだときほ)があげられます。
「神は細部に宿る」という格言があるように、洋服のデザインも
ディテールにどのような変化を与えるかが全体の印象を大きく左右し、
モノとしての質感に大きな影響を与えていると思います。
TOKIHOはその部分において、よくよく考え抜かれたお洋服を
作っているのだと確信しています。
TOKIHO
DUET ¥40,150(税込)
ICE ※ブラックは完売いたしました。
非常にシンプルなお洋服でありながら、そこから発する存在感は
凄まじく、多くのお客様が引き込まれるように手に取ってくださいます。
こちらが何も言わずとも。。
好きな時代がやや限定的なTOKIHOデザイナーは、
大きなイメージチェンジは図りません。
それはアナベルでお取り扱いをさせていただいている
そのほかのブランドでも言えることなのですが、TOKIHOほど、
その変化の度合いが小さなブランドは他にありません。
大体の形状として、TOKIHOのお洋服は見頃はアンティーク感のある
ややゆったりとしたシルエット。そして細身の袖、というのが特徴です。
多くのファッションデザイナーは、シルエット、素材、色、柄、に
変化をつけて楽しませてくれています。それはコレクションを見ていると
一目瞭然なのですが、TOKIHOはそれよりもカフスや襟、裾のデザインなど、
細かな部分の小さな変化に注力されたお洋服がほとんどで、そこが面白い。
今回のDUETも、裾のカッティングがよく見ると珍しい形をしています。
なおかつ、スリットにも微妙なカーブを加え、
着用した際のシルエットや佇まいに
拘ったデザインであることがわかります。
ポケットは実際の使用感を考慮し、サイドシームより
やや前側に切り込みで。
後ろ姿も重要です。
裾に注目すると気がつきます。
裾の中心が尖っています。
前後差を生み、リズムがある軽快な着こなしをお楽しみいただける。
ひとつまみのタックも利いています。
摘んだ箇所の閂(かんぬき)も質感を上げてくれる。
毎回小さな変化を繰り返すディテールの数々が、
着用した際の印象を左右します。しばらく襟のないお洋服が
続いたTOKIHOにも、2021年にはバンドカラーという襟が
付き始めた。
これは気分なのだと思います。
素材はリネンとコットンがおよそ半々で織り上げられた
タイプライタークロスで、腰があり、張り感もそこそこに、
ずっと触っていると、そのソフトなしなやかさに気がつきます。
往々にして、TOKIHOの選ぶ素材は皆、クラシカルで贅沢な素材です。
特に季節が限定されることなく、ほぼ一年中着ていただける
ワンピースかと思います。
冬には温かいカーディガンを羽織り、下にパンツを
履いて重ねてもいい。
もこもこと見えるカーディガンも、上から悠々とコートを
着ていただける。もちろん細身のコートでは難しいが。。
小さな変化を実験的に繰り返すデザインは、デザイナー吉田季穂の
ライフワークとなっているカメラにも現れているように思います。
時代を遡るようにレンズを付け替え、「いったいどう撮ったんだ?」
という素朴な疑問から想像を巡らせ、つい眺めてしまうその写真の変化が、
少なからず洋服のデザインに影響を及ぼしている。
被写体のわかりずらいその写真は、やはり細部を捉えている。
今後もその変化に注目したい。