自分の気分はどこへゆく
長いこと続いているワイドパンツ中心のパンツスタイルも、少しづつスタイリングのバランスには変化をつけてきた。きっと皆さんの気分やスタイリングも新しいものを取り入れつつ、従来のものも維持しつつ、少しづつ幅を広げてきたのではないでしょうか。今個人的に、自分のスタイリングにもよく取り入れるようになっているのが、ゆったりでもなく、ベーシックでもなく、ゆったりしながらコンパクトに収まるくらいのバランスのトップスです。メンズではなかなか理想に出会うことが少ないのですが、レディースではこちらが当てはまります。
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HAVERSACK アズマ裏毛ベスト ¥13,200(税込) チャコール
写真でパッと見ると、「なんだか着るのが難しそう」「着こなせるかちょっと心配」と思う方もいるかもしれません。しかし全くそんなことはなく、お手持ちのパンツやスカートに気軽に取り入れて、「あれ?」というくらいおしゃれになれるベストだと思います。
クルーネックは小さめで、先日からご紹介をしているカットソーのタートルなどは最も相性の良いインナーかもしれません。
脇がまっすぐのリブで、下まで開いているこの姿が、きっと「難しそう」と思わせるのかもしれませんね。
そして一番の特徴は「アズマ裏毛」というネーミングからも特別な何かを感じる通り、このフカフカの軽やかでエアリーなタッチの裏毛素材です。「裏毛(うらげ)」は洋服の素材としては超メジャー級ですから、ご存知の方も多いと思います。いわゆるトレーナー生地で裏側がフカフカ起毛したものを「裏毛」と言います。そして実に様々な裏毛がある中で、こちらはアズマ裏毛という特別な名前がついている。実は「アズマ編機」という、1970年代に活躍した旧式編機を用いて編み上げた、今ではちょっと特殊となった裏毛なのです。有名な吊り編み機の少し後に登場した機械で、吊り編みと同じく原材料に負荷をかけずにゆっくりと編み進める機械です。時間はかかるのですが、仕上がりは実にフカフカ。そして軽い。お洗濯を繰り返してもフカフカし続けるのも嬉しいところです。
今回はチャコールとブラックの2色展開です。
HAVERSACK アズマ裏毛ボレロ ¥19,800(税込)
同素材のこちらがショートボレロです。こちらは今年の春先にキルティングチェック素材でボレロブルゾンとしてご紹介したものと同じ形です。それは妻もお気に入りで春から着ており、デザインの取り入れやすさは実証済みです。パンツは主にワイドパンツによく似合い、スカートやワンピースにも合わせやすいショート丈です。
ボレロというと少し抜けやすいものもありますが、こちらはしっかりと肩も収まりやすいデザインです。
リブがフロントまで続いているのが特徴の一つで、袖下がすぐに裾というほどに極端なショート丈です。
順当に気温が下がっていけば、10月の頭あたりから半袖やノースリーブの上に羽織る形でスタイリングできると思います。秋冬ですし、つい長袖の上に羽織ることに固執しがちですが、ノースリーブの上にこのフカフカコットンは気持ちいですよ。特に晩夏の冷えた電車の中では最高です。
こちらもチャコールとブラックの2色展開です。
パンツはSPのチノ。インナーはNO CONTROL AIRのベアフライスです。このスッキリとした丈感とキュッとブラウジングした感じが個人的には最近のお気に入りです。
脇は大きく開いていますが、インナーにはカットソーやシャツを着ますから、動きやすくかっこいいというメリットの方しか感じないかと思います。
今シーズンお勧めの一つだったデニムに合わせてブラック。
撮影の段階ではスカートの入荷がまだでしたので、2つともパンツでの撮影でしたが、スカートにもとても良く似合います。
そしてこちらはインナーをブラウスに変えて着てみました。ボトムスは最近バイイングするようにしているストレートより少しフレアがかったシルエットのワイドパンツ。このパンツはquitan(キタン)のもの。
ボレロのチャコールはブラックコーデに足す感じで。
実はよく見ると可愛らしさのあるSUSURIのベルベットパンツを靴までしっかりメンズライクなスタイリングで。
こちらはゴーシュのワンピースに合わせて。
スカートやワンピースにもとても合わせやすいのが嬉しいボレロ。そしてショート丈ということもあって、一見甘さを醸しそうなアイテムながら全く甘さがなく、むしろかっこよさの方が前に出る裏毛ボレロです。
ブラックはFIRMUMのトラックパンツに合わせて。インナーにボーダーを入れることで、軽やかさやスポーティーなモード感もあるスタイリングです。ベルベットのリボンシューズに白ソックスなど、単体で見ると結びつかないアイテムが混ざり合ったところもお気に入り。
この素材感のパンツ、新鮮です。気になる方はぜひお早めにご試着どうぞ。
とても長い時間をかけて変化し続けている昨今のファッションスタイルが、ここにきて少し鮮明にその変化を映すようになってきたのではないでしょうか。1970年代後半から続いたDCブームを経て、80年代後半から90年代にかけては様々なストリートスタイルやセレクトショップブームが起こり、アメカジ、アウトドアファッションを自由に取り入れた日本独自のストリートファッションを確立しました。2000年代に入ると、90年代から磨きをかけてきた日本の小さなブランドが目立つようになり、「ドメスティック」「インディーズ」「マンションアパレル」などと呼ばれ、それぞれ海外進出も果たし、僕も何度か訪れていたヨーロッパのファッションウィークでは、日本のファッション誌やストリートスタイルがもてはやされ、かなりの熱を帯びていた。2005年あたりには「ユニセックス」や「ナチュラルファッション」といった単語が聞かれるようになり、ユニセックスは落ち着きながらも「ナチュラルブーム」はそのまま続き、おそらく2015年あたりをピークにして今も一定の影響力を持つジャンルとして定着している。アナベルのブログなどでは2017年あたりから「かっこいいか、かわいいか」といった具合に、「かっこいい」という言葉を僕がほのめかし始めている。この5年ほどはほのめかすどころか、「かっこいい」という表現をメインにブログを書いている。ナチュラルファッションからの流れが非常に長く強かったのが2000年以降の特徴だと思いますが、ここにきてどこかモードな空気感も混ざり合った「かっこいい」が立ち込めてきたようにも感じています。それを僕らなりにどう表現していこうか?週一のスタイリング撮影もそんなことを意識しながら進めています。いずれにしても、今までの提案を無にするのではなく、積み重ねた上での今ぽさの追求と提案をしていきたいと思うこの頃です。自分の気分はどこへゆくか。楽しみです。