丁寧に着続けたくなるお気に入り
皆さんお手持ちの洋服の種類に偏りってありますか?お店ではよくお客様から「もう〇〇ばっかり増えちゃって」のようなことを聞きますが、僕は結構それは良いことでもあると思っています。その偏りこそが個性です。僕の手持ちの洋服のほとんどはズボンとシャツで構成されています。シャツは実家から厳選して持ってきていてもザッと50着くらいで、パンツは同じく厳選しても40本くらいでしょうか。しかも現在進行形でどんどん増えている。。最近はカットソーを見直していて、意識的にカットソーを増やしたいと思いつつ、、やっぱりシャツが増えていく。好きなんでしょうから仕方がない。今日は、いつかなんとかメンズを作ってくれないかと願ってやまない最高に素敵なシャツのご紹介です。
SP(エシュペー) オーガニックコットンギャザーシャツ ¥33,000(税込) アンティークホワイト
このシャツのどこが好きかというと、、全部が好きなんです。生地、デザイン、ディテール、仕様、などこのシャツが持っている佇まいも大好きです。僕の持っているシャツの90%がバンドカラーシャツかノーカラーシャツなんですが、だからと言って「たまには襟付きを買おう」という発想には僕はなりません。たまたま気に入ったシャツがたまたまほとんどが襟なしだったということにしています。偏見や固定観念は持たず、結構ナチュラルに選んだ結果です。ちなみに今月買った面白いシャツは襟付きでした。まだ一度も着ていないので着るのが楽しみです。
洋服の佇まい(雰囲気)はどこからくるのかというと、、それは細かいデザインディテールや仕様、そしてそのレベルによって感じられるものだと思います。
このシャツはまず生地がいい。40/1(ヨンマルタン)の糸を甘撚りにしてシャトル織機で原材料に負荷をかけず、ゆっくりと織り上げたオックスフォード織の生地。オックフォード織は、アメリカのオックスフォード大学にちなんで、ある紡績会社が開発した表情のある平織の生地で、アメリカントラッドの象徴的なシャツ生地です。僕も大好き。この生地はそのオックスフォード織をとんでもなく上品に仕上げています。ふっくらとして密度もあって、丈夫さも持ち合わせた素晴らしいタッチです。まさに上質なアンティーク素材を触っているかのよう。
相変わらずステッチが美しい。アンティークと言われる時代のお洋服は、今と異なり縫い糸が全てコットンであった為、縫製に丈夫さをもたらす方法として運針(ステッチのピッチ)を細かくすることが上質なお洋服には求められていました。より細かく、布地に埋まるように縫い合わせることで強度を上げていたのです。縫製糸がスパン糸と呼ばれる丈夫なポリエステル糸に変わった今も、アンティークの雰囲気を出そうと思うと、このくらいのピッチで細かく縫い合わせることが必要になるというわけです。
肩幅はややゆったりして袖もたっぷり。写真ではわかりにくいのですが、袖下には切り替えのマチ布が脇から袖口まである2枚袖です。
袖口はカフスで幅は細めですね。男性的な剣ボロ仕様ではなく、スリットにカフをつけたデザインもこのシャツの雰囲気にぴったりです。
背面にはたっぷりのギャザーがあり、実質のバストサイズはサイズスペック以上です。かなりゆったりしたデザインにも関わらず、いわゆる「ビッグシャツ」のようには全く見えないのもいいところかもしれません。
裾はカーブのついたシャツテール。この写真の右上のあたりにカーブした裾が合体しているポイントがありますよね。そこには、多くのシャツで「当て布」や「ガゼット」などと呼ばれる補強の布地が付いていることが多いのですが、このシャツのそれがとても洒落ているので紹介します。(カメラでは撮影し忘れていたため、通販ページには写真がありません。このブログだけでのご紹介です。)
正方形の布地が縫い合わせてあるのがわかりますか?これは裏側です。
表からはほとんど見えないのですが、この小さな補強布を意地でもつけたデザインにちょっと感激です。一番厚みのあるところは布地が6枚か7枚ほど重なっている。ガゼットは平均的に4cm〜5cmくらいの布地を当てることが多いのですが、こちらはわずか1cm。。工場からの悲鳴が聞こえてきそうなデザインです。でもやる価値のある面白いディテールデザインだと思います。
次なるお気に入りポイントは色です。先ほどまで登場していたのは「アンティークホワイト」で、こちらがサックスブルー。どちらも最高なんです。なんでしょう、、このねりに練って作り出したはずなのになんとも気取らない色合い。決してホワイトの範疇からはみ出さないが、アンティーク感がしっかり出たホワイトと、その横に置かれるにふさわしいさりげないにも程があるサックスブルー。
ブランドでは濃色のチャコールもございましたが、アナベルではこの2色のセレクトといたしました。
僕のこのシャツに対する熱量は何処吹く風。。しかしながら着た瞬間に妻でも「いい服だ」とわかるというこのシャツをアンティークホワイトを中心にさまざま着てみました。
こちらは秋物のNO CONTROL AIRのモモ山パンツのライトベージュに合わせて、アンティークホワイト。
このゆったりさと前後差が素敵なシャツ。今日はスカートでご試着をしていただいたお客様がいらっしゃいましたが、スカートにもとてもお似合いでした。重ね着では、時にタックインもいいですよね。
上から同じくSPのベストを。
入荷したばかりのSUSURIのベルベットのパンツに合わせて。こちらもアンティークホワイト。
ボトムスは結構いろいろな形に合わせやすいバランスかと思います。小柄な方はテーパーしたパンツの方が安心感があるかもしれません。この上に何を重ねるか?春夏とは異なり、洋服を次々に重ねていく秋冬は、その点においてワクワクします。
同じくSUSURIさんから入荷したジャガード織の薄手の羽織ベスト。こちらも使い方で全く印象の異なるお洋服です。
その上からNATIVE VILLAGEのフードコート。もう11月くらいのスタイリング。
そしてなんとも言えないムードのあるサックスブルーはシンプルにあのパンツに。
今春夏も大人気だったFACTORYのプリーツパンツに合わせて。パンツは完売ですが、素材違いで秋冬も来月あたりには入荷する予定です。
年間着ていただけるシャツですので、着すぎて布地にダメージがきたら、補修をしながらでも着続けてほしい雰囲気のシャツなのです。
昔購入したアンティークのロングシャツで、破れたところを次々と補修し続けて着ているシャツが自分のクローゼットにもありますが、やるほどにそれはそれで愛着が湧いてきます。綺麗に直すこともリペア技術の凄さの一つですが、補修跡の累積は、それこそ個性の表れです。またそうなる前に、お洗濯にも気を使うと布地の持ちは全然違います。お気に入りは丁寧に洗って着過ぎないことも大切なのかもしれません。このシャツの洗濯表記は「洗濯機可」ですが、ぜひ丁寧に裏返してネットに入れて、「おしゃれ着モード」で洗ってみてください。干す時もそのまま裏返して。