大人コート
高校生の頃、アメカジというのが強烈に流行して、その分派的なスタイルがいろいろと誕生した。とはいえ、今思えばすべてファッションメディアが先導するように言葉をたくさん作り上げていた節はあるのですが、とにかくその最中にいた僕らにとって、自分はどのスタイルが好きか?ということをカテゴライズすることが重要だった。アメカジはもうひと世代遡って流行したアメトラとは異なり、とってもカジュアルだったので、メンズスタイルの中にロングコートというのがほとんど登場することがなかった。だから僕自身が初めて膝丈ほどのコートを着ることになったのは随分後のことで、20代の後半になってからのことでした。はじめて着た時は落ち着かない反面、すごくおしゃれになった気分を味わえたことを今でも覚えています。今日はとってもおしゃれなウールのコートを2つご紹介いたします。
NativeVillage アンゴラウールコート ¥96,800(税込)white smoke
これを見て、「あれ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もう何年も前にこれに似た形のコットンのコートをご紹介したことがあるからです。今回のコートは、その時のコートをもとにして、サイズ感を見直して製作したものになります。素材とのマッチングも最高で、とても上品なコートに仕上がっていると思います。
ボタンを閉めたり一つ外したりすることで、印象が大きく異なります。
袖周りにはゆとりがあり、どんなお洋服を下に着ていても着ていただけるデザインです。
内かけボタンが一つあります。
裏地はコットン100%で、胴裏は無地が付き、袖裏にはストライプが付いています。裏地は色違いのブラックも共通です。
袖口にはタブがあって、多少絞ることができます。
共布のベルトでウェストを絞ることができて、ループは高さが選べるようになっています。しっくりくる方をお使いください。
色違いのnoir blackです。ビーバーのような毛足の短い起毛感があることで 、毛並みに沿って撫でてみるとスベスベとした感触が心地よく、光沢感も非常に上品な印象です。着てみるととんでもなく温かいようで、室内ではクーラーを効かせての撮影となりました。
これが下のボタンだけを閉めて、ベルトはポケットに入れてまったく絞らずに着ている状態です。これを基本として、様々な印象の変化を楽しめるコートです。
ベルトはポケットにしまって、最もスタンダードな着方。
ベルトをキュッと閉めて。ちょっとトップス部分を持ち上げながらブラウジングさせて着るとこうなります。
大きなショールカラーが特徴的です。
トップボタンを閉めることでこんなふうに着ていただけます。さらにここから襟を立てても素敵なのですが、お化粧がついてはいけないので、撮影は致しませんでした。
合わせる洋服や気分で様々な着方をお楽しみいただければと思います。
また、このコートは羽織るだけでもかっこいい。
ブラックも同じく、パンツスタイルに羽織る感じでもかっこいい。
下のボタンだけを留めた感じ。
ベルトで絞って着た感じ。絞ったり絞らなかったりしてみると、この素材の上質さを痛感させられます。しなやかにまとまり、ドレープ感も美しい。適度な光沢感としっとりとしたタッチも最高です。
上まで閉めると巻物いらずの防寒性も申し分ない。
今日はもう一つ、店頭で気に掛ける方が続出している贅沢なツイードコートをご紹介したいと思います。実は袖周りなどのサイズ感がとても似ている2つです。素材やデザインの違いが大きいですが、バランスからくる着方には共通点が多いので、どちらかのスタイリングをもう一つに当て込んでもうまくいくと思いますよ。
GASA* ”雲の海” ツイードコート ¥132,000(税込) melonyellow×beige
先ほどのしなやかなアンゴラウールとは対照的な、懐かしい感触もある羊毛のツイード素材です。しかしこれもまた、ボタンの留め方で同じように表情の変化を楽しむことができるコートです。
大きな襟にゆったりとした袖周りは先ほどのコートと同じく、下にはどんなお洋服も重ねることができるコートです。
この小さめのタブを留めることで、大きなシャツ襟のような姿に変化します。
こんなふうに。
内かけボタンが付いて、かなり大きな革のバスケットボタンも特徴的です。
裏地はmelonyellowに合わせたコットンの高密度素材です。こちらは袖裏まで共通の素材を使用しています。
こちらもツイードの裏地付きですので、相当に温かいことに間違いございません。
前を開けてもかっこいい。そして昔のツイードと異なり、軽いと言ったら嘘になりますが、ツイードにしては軽く感じました。決して重くはないコートです。昔はツイードは重くないとダメだとまで言われていましたが、軽さを求める時代を経て、今はメンズでもそこまで本格的なツイードを扱うブランドを見なくなりました。ちょっと寂しいような気もします。
ボタンを留めて襟を作って着てみると、まったく違った印象で着ていただける。
もう一色はこちら。grape×chacoalの交織の綾織のツイード。
経糸と緯糸の色を変えることで、まるで斜めのストライプのような印象の綾織の表情が生まれています。さらに表面が起毛していることで綾目はいい具合にぼやけて生地の上質感を助長しています。
こちらはSPのコットンワンピースに重ねています。
年を重ねても着続けられるツイードならではの落ち着いた印象もあるおしゃれすぎるコートです。
こちらもタブで留めることでシャツ襟のような着方が可能です。台衿や月腰を作らず、少し前に迫り出すようにデザインしたあたりがとても目を引きます。
こちらも先ほどのNativeVillageのコートと同じくとっても温かいコートであることは間違いございません。
前を開けて羽織感じでもサマになる。
男性のファッションでロングコートがまだまだ少数派なのは、僕は20代後半で体感しましたが、ちょっと照れ臭さもあるのだと思います。やっぱり膝下丈のコートはエレガントな雰囲気が出ますから、男性が着るのはどうなんだ?的な自ら導き出してる偏見の渦に陥り、結局安心感のあるハーフコートに落ち着いています。その点、女性はとっても積極的で新しいものを取り入れてみようと思う姿勢が男性とはまったく違って面白い。だからいつの時代も前衛的なファッションはレディースが牽引し続けるのでしょう。ファッション年齢の高い大人の女性に向けて、お勧めできる素敵すぎるウールコートのご紹介でした。