子供時代のトキメキを
子供の頃、密かに面白い漫画を発見した時、誰かに教えたくて教えたくて仕方のない衝動に駆られること、ありませんでした?男子だけですかね?小学3年生の頃の「こち亀」や「七色インコ」、中学生になった頃の「童夢」がそれでした。他にも色々読んではいたでしょうが、その3つは特に記憶が鮮明です。誰の家に教えに行ったかまで覚えています。今日はそんな気分にさせられた面白い(興味津々)シャツを2つご紹介いたします。
FIRMUM 2ピースドルマンシャツ ¥27,500(税込)pink stripe
見るからに普通ではない感じが伝わるかと思いますが、細かいデザインより何より、、ロンドンストライプがまずは眩しいくらい新鮮に感じ、展示会場でウキウキしてしまいました。全色試着してどれにしようか個人発注で悩む始末。
襟は台襟付きですが、襟が身頃にへばりつくように沿うような羽襟であるため、良い具合に襟の存在感が薄まる、しかしバンドカラーではないといった、絶妙な襟のデザインです。
2ピースドルマンというネーミングから想像してみると、このシャツのユーモアが見えてくると思います。実はこのシャツ、前身頃、後身頃、袖、この3つが一つのパーツ(型紙)で出来ており、それが左右で2つあるため2ピースドルマンと命名されています。
脇はこのように袖下まで急カーブで繋がっており、縫製は裏側が表に見えているような視覚的にも遊びのあるデザインです。
ストライプは地の目がわかりやすくてより一層面白い。
通常のシャツに見られる肩線も肩ヨークもなく、このダーツ一本で前身と後身のバランスを決めています。
この置いた時にわかる、前身頃と後身頃のバランスも絶妙です。着用した際になんとも美しい姿が現れます。
袖口はカフスですが、剣ボロではなく「行ってこい」という(正式名称かどうかわかりません)仕様で、その先に実は小さなタックが入り、袖のシルエットを形成しています。
背面はいつもの横ダーツ。
Brown stripe
実は僕自身は最終的にピンクを個人オーダーしたのですが、迷ったのはこのブラウンでした。今までの洋服屋人生で一度も着たことがないストライプです。実にかっこいい。茶系好きとしてはやっぱりこちらにすればよかったか、、などと久しぶりにお客様と同じ目線で見てしまうシャツなんです。
ロンドンストライプの代名詞のようなブルーストライプは、ブルーの持つ誠実さからか、ユーモアのあるデザインに乗せることで、カラーとデザインの相乗効果が最も大きな1色ではないでしょうか。お仕事にもさりげなく取り入れてほしい。
white
ホワイトはストライプと比べてデザインのポイントがわかりにくい色なのですが、それがゆえにおしゃれです。また今回のこちらのシャツは、大きめに着るのもかっこいいと感じたこともあり、シャツでは初めてとなりますが、XS、S、の2サイズ展開といたしました。XSでも165cm前後の方までカバーしそうですが、少しゆとりを持って着てみたいという方は、Sもありだと思います。僕は170cmでSを個人発注しています。ただ、XSとSで結構な差がありますので、サイズスペックをよくご覧になって検討してください。
ホワイトを着用しています。身長は155cmでXSサイズです。たっぷりしていることは確かですが、いわゆるユニセックスなお洋服とは一線を画すような立体的で、ゆったりとしながらも体に吸い寄せられるような曲線が魅力的です。
前から見ても横から見ても、大きなシャツを着ているような印象を抱かないのが素敵です。
ピンクストライプは白のチノパンに合わせています。袖はパターンの曲線と一本のダーツ、そして小さなタックだけで表現していますが、何度練り直したのか?とてもとても綺麗です。
そして前から見た時のオーソドックスさが、全貌を知った上で見るとそそられるのです。ちょっと動いただけで、「あれ?」ってなるからです。
またストライプは横から見た際の地の目が独特で、面白い。ここでも目を引くのはホワイトにはないストライプの特権です。
ドルマンだとタックインが難しいかも?と思っていましたがそんなことは全くない。通常の腕を上げる動作では全く問題なく着ていただける嬉しいドルマンです。
ブラウンストライプはNO CONTROL AIRのタイパンツに合わせて少し綺麗めで個性的なスタイリング。
ボトムスはフォーマル感のある素材ですから、人によっては、また職種によっては、通勤にもバッチリです。アナベルにはないけれど、これにヒールを合わせても素敵ですね。
肩線がないので、着た人の体型に応じて、このダーツの位置が前にきたり、後にいったりするでしょう。
ブルーストライプはビシッとトラッドな印象を作るために、ライトグレーのサキソニーを合わせました。色合わせから受ける印象とシャツのデザインとのギャップが素敵すぎるコーディネートではないでしょうか。
タックインも角度によって、印象が変わりますね。
これでドルマンシャツは全色ですが、実は冒頭に書きました通り、今回このロンドンストライプにも惹かれたため、もう一つシャツをセレクトしています。視覚的なインパクトはドルマンの方がございますが、こちらのシャツはプロダクトとして興味津々です。
FIRMUM ダーツスリーブシャツ ¥27,500(税込)
こちらはドルマンと違い、置いた感じではその特殊性がわかりません。そしてなぜこんなことになっているのか、凡人には理解できませんが、着用した際の着心地がずば抜けていることは確かです。ボックスシルエットのふりをして、肩周りと袖付けにこだわり抜いた逸品です。
まず襟は同じく台襟付きで、張り付くようなチビ襟です。
そして先ほどは触れませんでしたが、ボタンは上側が面積の小さくなった、、地味ながらFIRMUM、NO CONTROL AIRでしか見たことのない、断面で見るとわずかに台形になったこだわりの特注ボタンです。
バルーン型の袖は他でも見ることはありますが、こちらはいい具合に癖がなく、しかし不思議なディテールの効いたデザインです。袖周りと肩周りを合わせてみるとかなりゆったりしたサイジングのシャツにもかかわらず、非常にすっきりと見えるシャツになっています。
袖付けがずれているのがお分かりかと思います。前側の方が内に入っています。
しかもしかも、この袖、、ダーツの入った一枚袖です。お客様にお伝えする事もないのですが、縫製の工程がよくわからない洋服に見えてしまい、「ドレメの画伯」と言われたスタッフ横やんに聞いたところ、「縫製の工程がすぐにわからない服、、久しぶりに見ましたね。。」と呟きつつ、5分くらい睨めっこをして理解した次第です。
とっても面白い袖ですね。着心地と見た目のスタイリッシュさが際立つ逸品です。
こちらはシャツテールでガゼットもございます。
背面はこちらも横ダーツです。
こちらも同じく4色展開です。またこちらはXSサイズのみの展開といたしました。
よくカットソーで、フロントがセットイン、後がラグランという袖付けはありますが、これはその逆をさらに複雑にしたような見た目です。細かいことは置いておいて、着用してみると素晴らしく美しい袖周りに驚くばかりか、その着心地にもうっとりするシャツです。
綺麗めで、実はゆったりとした着心地のシャツなのです。
肩が内側に入ったデザインが、ストライプだといっそうに際立ちます。
ゆったりした袖付けで、とてもシャープな印象の袖の横姿。
タックインした際にもその格好良さは際立ちます。
白いパンツにブルーのロンドンストライプを合わせると、サイズ感はどうであれ、やっぱりトラディショナルな雰囲気が出てくるから不思議です。
袖付けの角度のことを袖山と言いますが、このシャツは袖のデザイン、大きさ、袖山のバランスが本当に面白い。
トラディショナルな雰囲気の上に、またギャップのあるビッグベストを合わせるとおしゃれです。このベストもシャツと同じくFIRMUMの商品ですよ。今シーズン、ジャケットやアウターの上にも合わせてかっこいいと思ってバイイングしたベストです。
最後はホワイトです。ボトムスはFACTORYのコットンサルエルパンツです。今シーズンはスウェードタッチで滑らかなネル素材を使っていて、適度なしっかりさと滑らかさが絶妙なパンツです。
どの角度から見てもやっぱり袖周りに目がいってしまうデザインです。先にご紹介したドルマンと違い、こちらはシャツテールでガゼットがついているので、よりシャツらしいシンプルな佇まいも感じます。シンプルでありながら、実は凝った作りで個性の光るシャツだと思います。
この2つのシャツの前で、結構な時間を裂いた展示会でした。今すぐ誰かにこのシャツのことを伝えたいと思った僕は、バイヤー用にいただいた商品リストのこれらのシャツのページに、「今シーズンのどの商品よりおすすめしたい服」というコメントをたぶん自分でも忘れてしまわないようにオーダーした時の気分を書き残していた。これを見た時に、中学時代に読んでワクワクした、「アキラ」で有名な大友克洋さんの「童夢」という漫画を発見した時の高揚感を思い出した。アキラがヒットする前に描かれていた1冊完結の単行本(連載があったかどうかはわからない)で、誰かに伝えたくて伝えたくて、忘れないように教科書に書き込んでいた。
FIRMUM、NO CONTROL AIRのデザインは、昔からハッとさせられるものが必ずと言って良いほどあるにはあるのですが、今回のシャツはここ数年、面白い型紙製作と洋服デザインに取り組んできた米永さんの現在進行形の集大成だと勝手に感じてしまうほどドキドキいたしました。ロンドンストライプに白無地をさりげなく足してくれているあたりも、お客様への配慮を感じさせる、米永さんらしいカラー展開です。シャツが好きな人も苦手な人も、一旦手に取って眺めて欲しいと思います。