開拓者
妻が目をキラキラさせながら、
しかしながら半分ボーっとしながら、
楽しそうにデザイナーの話に耳を傾ける。
NO CONTROL AIR とFIRMUMを手掛ける、
米永さんの話。
洋服のことなど知らない妻は、もちろん素材の知識もない。
丁寧に素材の解説をしてくれる米永さんの話が楽しいようだ。
「なんか学生に戻った気分で楽しいの。」
「今度行ったら聞いてみよう。」
何を?
「テストに出るかどうか。」
常に新しいことに挑戦し続ける米永さんの新しいブランド、
FIRMUMから、大きなシャツのご紹介です。
FIRMUM(フィルマム)
コットンシーチングビッグシャツ
¥17,500+tax
グレー、ブラック
コットンのシーチングだが、
シーチングとは思えないような滑らかさ。
表面のしわ感は、生地の製造工程で付いたもの。
わざとこのような仕上げにしているため、
アイロンをかけても消えません。
テストにも出ません。
とても大きな身頃に対し、とても小さな襟がいい感じ。
下がりが大きく、ボタンは一番上まで閉めて着て、ちょうどいい。
そして肘を極端に膨らませた、
まさにバナナのような袖が特徴的。
この袖のデザインで、全体のバランスが整っているように見える。
脇にはスリットが入り、
ジャケットっぽさも感じられる。
そして、FIRMUM と言えばこれ。
背面の横ダーツ。
もちろんチカラを逃がす意味合いもあるのだろうが、
これだけ大きなサイズ感ゆえ、丸みをつけるデザイン的
な要素と、アイコン的な要素が強いようだ。
たまーに眠そうにしながらも、興味深くデザイナーの
話に耳を傾ける妻に着てもらいます。
裄丈は長いので、袖をクルクルっと
まくるのが彼らの提案です。
昨日、ご紹介したFIRMUM のワイドパンツに合わせて。
少し丈が長めですので、サルエルパンツや股上の深い、
ワイドパンツに合わせると素敵です。
芸大で建築の勉強をしながら、
独学で洋服を作り初め、自らお店を訪ねて売り歩く。
それが彼の洋服人生の始まりだそうだ。
その4年後、正式に「NO CONTROL AIR」を立ち上げ、
17年が経つが、未だに独学をし続けている感覚だそうだ。。
ビッグサイズ×ビッグサイズ。
これが、FIRMUMを通じてたどり着いた、
彼らなりのスタイルだ。
もちろん着方は所持した人の自由だが。
NO CONTROL AIR との違いは何だろう?
そう考えたときに、このサイズバランスの極端な
スタイリングはあげられるだろう。
とても自身の感性に素直に、大胆に取り組んだ結果だと思う。
もう一つは、素材使い。
これは、縛られるほどの意識はなさそうだが、
明らかに天然素材を意識して取り組んでいる。
「みんなが天然素材をもてはやすなら、、、」
という天邪鬼な理由で化繊の可能性を探りながら
今のスタイルを構築したNO CONTROL AIR との
共存を図るうえで、また作り手としての内面的な
バランスを取る意味で、それは必須だったのかもしれません。
そして、FIRMUMを数シーズン見て最も強く感じるのは、
新しい時代の「ユニセックスブランド」。
我々も含め、80年台後半から90年代初頭にかけて夢中になった、
アメカジやアウトドアファッションをベースにした
ユニセックスなファッションは、2000年台まで続く大きな
ムーブメントだった。
とりわけ関西を中心に巻き起こったムーブメントだけに、
きっと彼らのここに対する思いは、良かれ悪しかれ、
多かれ少なかれ、あったに違いない。
そして大好きな天然素材をいったん横に置くことで、
皮肉にも大成功を遂げるNO CONTROL AIRでの日々の探求を
通し、ここから始まる新しいユニセックスを、
FIRMUMを通して、実現しようとしているのかもしれない。
そう、、洋服の学校に通ったことがないままに、ここまで
独学で成し遂げた彼らは、これからもずっと開拓者なのだ。
やっぱり、大好きで、目が離せない。